2月25日、アラバマ州バーミンガム近郊のバーバー・モータースポーツ・パーク(全長2.38マイル)で行なわれたインディカー・シリーズ合同テストに参加し、公式の場でのインディカー初ライドを終えた佐藤琢磨(KV Racing Technology)選手を訪ねた。インディカーの印象、環境・生活体制等々、アメリカへと戦いの場を移す佐藤選手の「今」を聞いた。
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Q:初めて本格的にインディカーで走り込んだわけですが?
A:(契約直後、チームのテストで1時間だけ走った)セブリングでは、シェイクダウンという要素で車に慣れるということが必要だったので、いよいよ始まったという感じです。まずはクルマにちゃんと慣れることです。セブリングと違ってここは中高速のコーナーがたくさんあるので、違った感じも受けました。セブリングではセットアップをいじらなかったのですが、今回は変えることでクルマがどう変化するかも実感できました。とにかく一歩ずつ勉強していきたいです。やるからにはトップを目指してやりたいですし、僕もまだまだいろいろ勉強することがあります。時間はかかると思いますが、一日でも早く自分のイメージ通りのレースが出来るように。今日一日走ってだいぶ理解が深まりました。
Q:インディカーの印象は?
A:F1とは直接比べられないですよね、重量も全然違うし、ダウンフォースレベルも違うし、パワーも違う。自分はF3からF1に移行したので、これまでビッグパワーのいわゆるビッグフォーミュラーにはF1を除いて乗ったことがないのですが、感覚的にはどちらかといえばF3の延長上に近いかな、という印象を持ちました。同じダラーラ(シャーシ)というのもあるからだと思います。タイヤブランケットが無かったり、殆ど電子制御もないマシンということも含めてクラシックな感じがします。でも、こういうサーキットに持ってくると速いですし、とてもチャレンジングです。
Q:ステアリングが重いでしょう?
A:F1に比べるとステアリングは重いですね。ドライバーにとっては特に負荷がかかる部分ではないでしょうか。そのあたりはトレーニングでフォーカスする部分ではあります。F1だと首がメインでしたが、アッパーアーム、アッパーボディから腕回りとかに変わってくるかもしれませんね。
Q:オーバルコースでのレースについては?
A:ものすごく奥が深いと思っています。決して簡単ではないですし、今までのドライビングスタイルとは違うものが求められると思っていますが、これも走ってみないと判らないですね。
Q:インディは観客・ファンとの距離間が近いですが……。
A:レースイベントに行っていないので何とも言えないですが、去年のインディ500の予選、バンプデーに行った時の印象では、確かにファンとの距離がすごく近く、そのあたりはファンにとってはうれしいことだと思うし、僕らも直接応援を受けられる、サポートを受けられるというのはすごくいいことだと思いました。F1で来た時でもインディとかモントリオールのカナダとか北米はレース自体が盛り上がります。ファンも盛り上がるし(笑)。本国のオープンホイールのトップフォーミュラーであるインディカー・シリーズではかなりの盛り上がりになるだろうと思ってはいますが、何しろ経験してみないと判らないですね。とにかく今はテストでキッチリと走り込んで、開幕戦となるブラジルに備えたいと思います。
Q:チームの体制はどうですか? キーパーソンはCo-Ownerのジミー・バッサーという感じ?
A:ジミーも“Full Behind“というか、すごく温かく迎え入れてくれました。チーム全体がすごくいい雰囲気です。ジミーのアドバイスはオーバル戦に入ってから大きくものを言うと思います。現時点でもオーガナイゼーションを含めて、「インディカー・シリーズではこういう風にフォーマットとして走って行くんだよ」という部分をチーム全員から吸収している最中です。今回のテストでシリーズはこんな感じなんだという雰囲気つかめて良かったです。
Q:生活のベースはモナコからアメリカに移すのですか?
A:家族もいるので一気にという訳にはいかないので、まずは僕だけ(インディアナポリスの)チームの近くで場所を探しています。どこに住むかは時間を掛けて決めたいと思っています。家族と過ごす時間が少なくなるのは寂しいですが、特に不安はないです。新しい場所に飛び込んでいくことは楽しいことなので、心配はしていないです。
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最後に、新たなチャレンジャーを迎える側のドライバーにも「佐藤琢 磨のインディに参戦」について聞いてみたのでお伝えしよう。「彼 がこのシリーズで走ることは素晴らしいことだ。パワーステアリン グやトラクションコントロールがないなど、F1とは全く違うドラ イビングスタイルだけどこれまでのバックグラウンドを見る限り、 沢山学び、すぐに成果を出すだろう。彼はこのシリーズの雰囲気を エンジョイすると思うよ。僕はもちろん、よきライバルの登場を大 歓迎するよ」エリオ・カストロネベスはトレードマークの弾ける 笑顔で応えてくれた。