中国の奇瑞汽車が、フィアットのシチリア工場を購入するため交渉中であるとした報道が14日、イタリアを駆け巡った。イタリアの複数メディアが、消息筋の話として報じたもの。
この報道に関して、イタリアのスカイオーラ経済推進大臣は、「フィアットが継続して(シチリア工場を)維持するのが最善」としながらも、「進出を望むどの企業にも門戸を開く」と、国として外国企業も歓迎の意を表した。
いっぽう奇瑞は、「フィアットのシチリア工場は購入する意思はない」と報道を同日に否定したが、同時に、今後他社の既存工場買収も含めて15の海外生産拠点を計画中であることを発表した。
今回話題となったフィアットのシチリア島の工場は、所在地の地名をとってテルミニ・イメレーゼ工場と呼ばれている。現在の従業員数は約1400名で、フィアットの国内6工場の中では最も少ない。もともとはシチリアの工業振興およびマフィアと無縁の健全な産業育成を目指し、イタリア政府のもとで整備計画が進められ、1970年に操業開始した。
以来フィアット『プント』などを生産してきたが、遠隔地による部品調達および輸送効率の悪さなどが、かねてからの問題となっていた。2000年以降、フィアットが経営危機に陥ると、欧州での現地生産拡大を目指すトヨタへの売却説も浮上したほか、06年の危機脱却宣言以降も、たびたび規模縮小の検討対象となった。07年6月には猛暑のため、従業員が生産ラインを放棄する事件も発生した。
09年春フィアットは、現在生産中のランチア『イプシロン』が生産終了する11年以降、シチリア工場をパーツ工場に転換する案を提示した。さらに11月には、マルキオンネCEOが国内工場の一部閉鎖を示唆したことから、ふたたびその筆頭候補としてシチリア工場の存在が取り沙汰され、現在に至っている。
なおイタリアでは、すでに07年から奇瑞製SUVをベースにした『dr』が、イタリア企業によって南部モリーゼの工場で組立・生産されている。