【池原照雄の単眼複眼】プラグインHVがEV普及を脅かす

エコカー EV
プリウス プラグインHV
  • プリウス プラグインHV
  • プリウス プラグインHV
  • プリウス プラグインHV
  • プリウス プラグインHV
  • プリウス プラグインHV
  • 特徴は「電池切れの心配のないEV」
  • i-MiEVは2010年4月より個人販売を開始する
  • i-MiEVカーゴ(東京モーターショー)

電池切れの心配のないEV

トヨタ自動車がハイブリッド車(HV)技術で、さらにアドバンテージを得た。フリートユーザー向けのリース販売を始めた『プリウス プラグインハイブリッド(PHV)』の投入である。2年後には年間数万台規模での市販にも踏み出す。

フル充電から20km余りは電気自動車(EV)走行ができ、その後もHVの高い燃費性能を発揮する。「電池切れの心配のないEV」(開発部門担当の内山田竹志副社長)というたとえが、このPHVの特徴を端的に表す。2次電池のコストという巨大な壁が立ち塞がる現状では、EVの普及を脅かす強力なライバルの出現だ。

トヨタが東京都江東区の同社展示施設「MEGA WEB」でプリウスPHVの技術説明会を行った14日、筆者は同施設内のコースで試乗の機会を得た。走ったのはわずか2km程度だったが、ひと言で表現すれば「運転が楽しい」クルマだ。

発進から普通に加速していけば、100km/hまではEVモードで走る。その過程でアクセルを踏み込めば、直ちにエンジンが起動してHVモードの走りとなる。試乗コースが短いなか、EVモードでは70km/hまで引っ張ることができた。

◆なぜか運転が無性に楽しい

一般道を流れに沿って走れば、電池が持つ間はHVに頼らなくて済むという実感だった。急加速してエンジンが立ち上がると、走行音もEVの単調なモーター音にエンジン音が加わってパワーが実感できる。そのプロセスが、なぜか無性に楽しかった。

なぜ楽しいのか? 自己分析すると、燃費や環境負荷が小さいという精神的な満足感、先端のテクノロジーを操ることの爽快感、さらに内燃機関への郷愁がない交ぜになっているからだろうと思う。

2次電池は、トヨタとしては初のリチウムイオン電池を採用し、蓄電容量はプリウスの4倍に相当する5.2kWh。従来の10・15モードより、やや実用走行に近い「JC08」モード測定で、最長23.4kmのEV走行ができる。PHVトータルとしての燃費は、1リットル当たり57kmだ(JC08モード)。

◆充電は家庭のコンセントで3時間

EV走行は、フル充電からだと実用走行でも15km程度は安心して走れるだろう。モニターとして通勤に使ってきた内山田副社長は、自宅から本社までの距離が、まさに15kmくらいだという。執務中は充電するので、実際に通勤の往復は「ずっとEVで走れる」そうだ。

EVの蓄電容量は、日産自動車の『リーフ』が24kWh、三菱自動車の『i-MiEV』が16kWhであり、プリウスPHVはi-MiEVの3分の1程度。純EVより電池が少ない分、充電時間も短い。家庭用の100ボルトだと約3時間(200ボルトは約1時間40分)で済み、特別な充電装置も不要だ。

搭載電池が少ないということは、EVに対するコスト競争力もすこぶる優位になる。プリウスPHVはHVのプリウスとパワーユニットを共通化しているため、2年後の市販時には300万円を切る価格が設定されるのだろう。

搭載電池がさらに少ないHVにはイニシャルコストでは勝てないが、当座はEVの普及にブレーキをかける存在になる---。そんな筋書きが見えてきた。

《池原照雄》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集