現行のレクサス『LS460』が登場して約3年、日本のクルマ好きの多くは、「LS」より輸入車が好きなようだ。
伝えられるLSの苦戦は経済状況のせいばかりでなく、クルマの善し悪しを超えるブランド力が輸入車にはまだまだ健在で、日本人の舶来指向が簡単に払拭できないことが大きいのではないか。
それを打破するのがハイブリッド車の存在だろう。LSも「LS600h」のような最先端・最高級ハイブリッド車には大きな存在意義がある。高級で環境負荷の少ないクルマこそがレクサスの輸入車に対抗しうるアイデンティティといえそう。
その意味で、LSはもうハイブリッド一本でいいのではないかと思うのだが、今のところはそこまで特化できず、今回のマイナーチェンジでガソリン車にスポーツ系のバージョン「SZ」やコンフォート系のバージョン「UZ」という2つのスタイルが追加された。結果、LSのアイデンティティはますます曖昧になった気がする。
とはいえ、バージョンSZはクルマ好きにとってはなかなかいいクルマだ。快適な最高級セダンでありつつ、走らせれば相当にスポーティ。V8ガソリンエンジンのパワー感やFRらしい挙動、しなやかなコーナリング感覚をまるでライトウエイトスポーツのように楽しめる。それでいて様々な制御技術が手の内にあって安全という点で、高性能日本車の理想であり、クルマ好きにとって「お金があったら欲しいクルマ」の一つに仲間入りした。
ガソリン車の時代が去っていく中、バージョンSZは20世紀を生きてきたガソリン自動車の「最後の華」となるセダンかもしれない。