ライセンス講習は1時間40分
サーキットというと、カリカリにチューニングされたスポーツカーやレーシングカーが激走するところ……と思ってしまいがち。しかし、多くのサーキットでは普段の愛車で気軽に参加できるプログラムを実施している。世界規格の鈴鹿サーキットや富士スピードウェイ(FSW)も例外ではない。本格的な環境でありながら、手軽さ、お値打ち感をアピールする。
では、どのような手順で本格サーキットの走行ができるのか。今回、富士スピードウェイを取材した。
サーキットを“走るだけ”ならば、一番手軽な『体験走行』(3周2000円)というプログラムがある。ライセンスもレーシングスーツも不要。ただペースカーが先導し、追い越しができないため、どちらかといえば「周遊」といった趣。クルマの限界性能を引き出して思い切り走りたいとなると、やはり専用の「FSWライセンス」が必要となるが、その取得方法は簡単だ。1時間40分の講習を受けるだけ。普通自動車免許証さえあれば、まったくの未経験者もOK。新規料金は4万1500円(ショートコースは2万500円)。ライセンスは発行日より1年間有効で、移行1年ごとに更新料2万8900円(同1万8400円)がかかる。
「講習では、サーキットのマナーや規則を中心にレクチャーします。サーキット走行はフラッグ(信号旗)の指示に従って行われます。認識不足は重大事故につながるので、フラッグの種類や意味をきちんと理解しなければなりません」と語るするのは富士スピードウェイのコース事業部 冨川英和係長。コースは安全に設計されているとはいえ、万一に備え、ヘルメットとグローブを必ず着用しなければならない。講習が終わったら即ライセンスが発行され、いよいよフリー走行だ。特定の時間帯を自由に走れる『スポーツ走行』というプログラム。料金は40分8400円(ナンバー付き車両)など。
◆公道とはまったく異質
ピットロードからコースに進入。まず驚かさせるのは、道の広さだ。公道であれば4車線分はあろうかという幅だ。最大で25m。もちろん対向車はないので、コーナーからコーナーへ、道幅をいっぱい使った走りができる。公道を走る感覚とはまったく異質なものだ。
さらにFSW名物の1.5kmストレートでアクセル全開! 普段は出せないスピードもここではおとがめなし。世界屈指の高速サーキットの醍醐味が存分に味わるうえ、コース外側には広いセーフティーゾーンがあるので安心感もある。
サーキットライセンスを取得してレース参戦にステップアップする人も多い。埼玉県からきた増田真彦さんもその一人。「仲間に誘われてライセンスを取ったのがきっかけでした。今乗っているロードスターのカップレースがここで開催されているので、練習をかねて月1回ペースで通っています。ストレートと100Rが好きですね」と語る。ラップタイムがわかるので、自分のドライブテクニックが上達していく過程を実感できるのも魅力のひとつだ。
FSWには全長4563mの国際レーシングコースのほか、全長920mのショートサーキットもある。こちらは日本人初ル・マン24時間耐久レース制覇者、関谷正徳氏監修のもと設計されており、なんと18通りものコースレイアウトが可能。充分なコース幅やセーフティーゾーンを備える。規模は決して大きくないものの、本格的なテクニカルコースとあって、ドリフト好きなどコア層からも人気が高い。1年半前から2ヶ月に1回のペースで走りにきているという神奈川県座間市の須崎正裕さんは「面倒な手続きがなく、しかも料金が安いのがいいですね。気軽に来てさっと練習できます」と、タイヤをキーキー鳴らしながら華麗なるドリフト走行を見せてくれた。料金は25分2500円など。
「会員数は約6000人。これは日本最大級です。最近は女性も増えています。講師という立場上、サーキットの攻略法について質問を受けることが多いのですが、FRかFFかそれとも4WDか、あるいは重量級のターボ車とライトウェイトなNAとでも最適なライン取りはまちまち。やはり実際に走ってみるのが一番ですよ」と冨川さん。いずれレースに参戦したい、ドライブテクニックを磨きたいという人はもちろん、サーキットの雰囲気を一度味わってみたい人にもうってつけ。愛車がオンボロでも意外に楽しく走れる、ということも再発見した。