BMWグループは4日、『M3クーペ』の高性能仕様車、『M3 GTS』を発表した。徹底した軽量化により140kgのウェイトダウンに成功。排気量を引き上げた4.4リットルV8(450ps)を搭載し、サーキットで最高の性能を発揮することを狙う。
BMWは現行M3クーペ(E92型)で、さまざまなモータースポーツに参戦。米国では「M3 GTR ALMS」がアメリカンルマンシリーズに、欧州では「M3 GT4」がニュルブルクリンク24時間などの耐久レースに出走、活躍をしている。
M3 GTSは、モータースポーツ参戦のノウハウを応用して誕生したM3の高性能バージョン。ナンバープレートを付けたまま、サーキットでポテンシャルを発揮できることを開発の主眼に置いた。
そのハイライトは軽量化にある。BMWは2003年、先代M3クーペ(E46型)に限定車の「M3 CSL」を設定。CFP(カーボンファイバー強化プラスチック)をルーフやボディ前後に使うことで、110kgの軽量化を成し遂げた。
今回のM3 GTSでは、ベースとなったM3クーペがすでにカーボンファイバールーフを標準装備しているため、異なるアプローチで軽量化を推進。リアウインドウには「マクロロン」と呼ばれるポリマーをグラスファイバーで強化した樹脂を採用。さらに、エアコン、オーディオ、ナビゲーション、リアシートを大胆に省略した。
この結果、M3 GTSは1490kgの車重を実現。ベース車両と比較して140kgのウェイトダウンに成功した。
この軽量ボディに搭載されるのが排気量を400cc引き上げた4.4リットルV8。最大出力は450psと、ノーマルを30ps上回る。パワーウェイトレシオは3.3kg/psと1級の数値をマーク。軽量なチタン製エグゾーストシステムにより、抜けのいいサウンドも追求された。トランスミッションは7速2ペダルMTの「Mデュアルクラッチ」だ。
サーキット走行用の専用装備が奢られるのも、M3 GTSの特徴。イエローに塗られたスプリングが目を引く専用サスペンションシステムは、減衰力や車高の調整が可能。ブレーキは前6ピストン、後ろ4ピストンで、タイヤはフロント225/35ZR19、リア285/30ZR19を履く。
エアロダイナミクスにも配慮。フロントにはリップスポイラー、リアには大型ウイングを追加し、どちらもサーキットの特性に合わせて、角度調整ができる。ボディカラーは専用のオレンジが用意され、ルーフはカーボンのパターンが見えるブラックだ。
室内はロールケージ、6点式シートベルト、消火器、キルスイッチと、レーシングカーさながらのアイテムを装備。バケットシートも標準である。
M3 GTSは、2010年5月のドイツを皮切りに、夏頃には他の国でも販売開始。ドイツでの価格は11万5000ユーロ(約1550万円)だ。BMWは「ドイツ・ニュルブルクリンクでのラップタイムは、M3 CSLを上回る」と自信を見せている。