トヨタ自動車の豊田章男社長は2日、東京の日本記者クラブで講演を行った。その中でトヨタの現状について、「どん底に近い状態」と指摘し、「復活のカギを握るのは人材だ」と強調した。
「トヨタには、諸先輩方が情熱を持って育ててきたすばらしい人材が豊富にいる。厳しい環境の中で社長に就任した私にとっては誇るべき宝物」
ただ、その宝物を生かすも殺すも豊田社長にかかっているのは言うまでもない。そのため、社長就任以後、何度も自問自答したそうだ。そして、出した結論は「もっといいクルマをつくろうよ」である。
「われわれの存在価値はいいクルマをつくり、お客様から喜んでもらうこと。そして社会全体が豊かになること。いいクルマをつくらなければ、あるいはお客様から喜んでもらえなければ、いくら利益を出してもわれわれの存在価値はない。仮に利益を出しても、長続きしない」と力説した。
現在、国内の自動車市場は依然として厳しく、その原因の一つに若者のクルマ離れがあると言われている。しかし、豊田社長に言わせると、「クルマから離れているのは若者ではなく、メーカーではないか」という。そのため、社内に向かって「お客様にもっと近づくことを提案しよう」と訴えている。
豊田社長が誇るすばらしい人材も、上を向いて仕事をするのではなく、これまで以上にお客の立場に立って仕事をすることが重要だ。そうすれば、トヨタの復活も早く訪れるだろう。