3 | ラグジュアリーカー考 |
タンノイやアルテックなどの高級スピーカは、広く知られているが、ローサーを知る人は少ない。しかしローサーの繊細で艶のある中高音域を聴いてしまうと、貧弱なアルミ線ボイスコイルの断線や、管球式アンプのグレードアップが度重なったとしても、その魅力から抜け出すことは難しい。
これらは半世紀以上前に生まれた古い製品だが、今でも愛好家が使い続けている。ラグジュアリーブランドのあり方の一つといえ、ジャガーもローサーと同じイギリスの伝統あるメーカーなので、共通性を感じさせるところがある。
トランジスターなどの最新技術が導入され、古い技術のオーディオは消滅するように思われたが、予想に反して隠れたブームにもなっている。ジャガーも古いオーディオのように、昔の味を大切にしながら存続する道もあったが、マーケットの大きさは限られてしまう。
XFに始まり、新型XJへと展開するラインアップは、マーケットの規模を確保しながら、愛好家の願望を満たす新たなラグジュアリーカーを模索する過程にある。難しい舵取りだが、この種のクルマが生き残ることはクルマファンにとっても喜びであり、頼もしくもある。
D視点: | デザインの視点 |
筆者:松井孝晏(まつい・たかやす)---デザインジャーナリスト。元日産自動車。「ケンメリ」、「ジャパン」など『スカイライン』のデザインや、社会現象となった『Be-1』、2代目『マーチ』のプロデュースを担当した。東京造形大学教授を経てSTUDIO MATSUI主宰。【D視点】連載を1冊にまとめた『2007【D視点】2003 カーデザインの視点』を上梓した。