トヨタは『クラウン』の歴史を重ねる中で、あるいは『セルシオ』=レクサスを作る中で、静粛性にはとくにこだわってきた。今回の『マジェスタ』はその集大成ともいえるような高い静粛性を実現している。 静かさは走り出すとすぐに感じられる。エンジン音もロードノイズもとても低いレベルに抑えられている。この静かさはストレスのない走りにもつながる。 乗り心地の良さも同様だ。ただ、今回のモデルでは単に柔らかで快適な乗り心地を実現するだけでなく、操縦安定性にも配慮したチューニングが施されている。ドイツの高級車が持つような安定感とは違う、マジェスタならではのバランスが実現されている。状況によっては落ち着きのなさを感じさせるシーンもあったが、全体に良くまとめられた足回りだと思う。 艶消しの木目をふんだんにつかった内装は、好みによって評価が分かれる部分だろう。高級車らしさの表現としては物足りなさも感じる。これだけの面積を艶のあるウォールナットで仕上げたなら、それはそれで違和感につながってしまうのだろうが、クラウンとは全く異なる内装としただけに、もうひと工夫欲しいところだ。 4.6リットルエンジンと8速ATとの組み合わせも文句なし。強いていえば何速で走っているかが表示されないのが不満点。トヨタブランドのフラッグシップモデルらしく、最新の安全装備を備えることなども注目されるポイント。レクサスとも、かつてのセルシオとも違うポジションに立ったクルマだと思う。 ■5つ星評価 パッケージング:★★★★ インテリア/居住性:★★★★★ パワーソース:★★★★★ フットワーク:★★★★ オススメ度:★★★ 松下宏|自動車評論家 1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。