3月にまずセダンから上陸したアウディ『A4』は、デフとクラッチの位置関係を見直しフロントアクスルを154mmも前に出した全く新しいプラットフォームにより、オーバーハングを切り詰めた伸びやかなスタイリングと、前後重量配分を最適化。ロングホイールベース化による直進安定性の向上などを得ている。
実際、フロントをいたずらに固めなくなったせいか乗り心地は劇的に良くなったし、ハンドリングも極めてニュートラルで理想のラインをトレースできる。操作力が軽くゲインが急速に立ち上がるステアリングは気になるが、走りの質は大幅に向上した。味わいの面でFFとクワトロの間に大きな差が無くなったのも大歓迎だ。
加えて、居住性も向上したし、全体に漂うクオリティの高さは相変わらずのアウディ流で満足度は高い。積載性能を高めたワゴンのアバントと共に、現在Dセグメントで最も注目すべきモデルと言って良いと思う。
ただ、全長4705mm×全幅1825mmと、もはやEセグメントに迫るボディサイズをどう考えるか。これだけ大きくなれば広くて当たり前だが、コクピットなどは意外にタイトな演出で、パッケージングの密度感みたいな物は希薄だ。また、駐車場事情によっては取り回しの面もちょっと気になるところではある。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
石川芳雄│モータージャーナリスト
学生時代から自動車関連書籍の仕事を始め、二輪を含む自動車評論活動は20年を超えた。クルマを趣味の対象としてだけでなく実用のツールとも考え、ファミリーカーとしての使い勝手や乗り心地なども評価基準の柱に加える。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。08-09日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。