8月8日、日産自動車が先進技術の説明会と試乗会を行った。
原油高によるガソリン価格高騰や、消費者の環境意識の高まりにより、クルマの次世代パワートレインに注目が集まっている。その究極の姿は「FCV(燃料電池車)」など水素系のパワートレインと見られているが、ここ1年のガソリン急騰で存在感が増しているのが、電気自動車(EV)とハイブリッドカーである。今回の先進技術試乗会でも、日産のEVとハイブリッドカーが用意され、実用化間近の“次のクルマ”として紹介された。
まず最初に筆者が試乗したのは、EVの性能確認実験車。これは電気自動車の量産に向けてデータ収集をするための車両であり、見た目はコンパクトカーの「キューブ」である。2010年度の商用化の際には、専用デザインで市販予定だという。
◆高容量タイプの新型バッテリー搭載
搭載されているバッテリーは、日産自動車とNECの合弁会社であるオートモーティブエナジーサプライ社が製造したもの。熱安定性の高いコバルト系のリチウムイオンバッテリーで、ラミネートパックすることで信頼性の向上とコンパクト化を実現している。なお、日産ではEV用とハイブリッドカー用で特性の異なる2種類のバッテリーを開発しており、EV用は高容量タイプが用いられている。
試乗して、まず感嘆したのは「静かさ」と「スムーズさ」だ。今回の試乗会はテストコース一部を用いて、長距離や高速走行を試すといった趣旨のものではなかったが、走り出しから時速80Km前後の中速域で試すだけでも、EVならではの気持ちいい乗り味が体感できた。電気モーターで走るEVやFCVの場合、パワートレインの出す騒音や振動がない代わりに、インバーターやモーターから高周波ノイズが聞こえてくることがあるのだが、日産のEV試験車両はそのノイズもかなり抑え込んでいる。アクセルの動きに対する反応もリニアで、完成度はかなり高い。「このまま市販してもいいのでは?」と率直に感じたほどだ。
EVに乗る度に感じるガソリンエンジンとはまったく異なる「新しい楽しさ」はここでも健在。モーターによるトルクは十分にあるのに荒々しさとは無縁で、その静かで透明感のある走りはとても知的で好ましい。今のクルマに興味を失った人たちにこそ、EVを体験してもらいたいと思う。
むろん、EVの実用化にあたっては、バッテリーによる航続距離が気になるところだ。日産自動車によると「現在のバッテリーパック構成で航続距離は160Km程度を想定している。できれば、これを200Km程度まで延ばしたい」(説明員)という。EVを都市部や日常生活のモビリティと考えれば、実用的なレベルと言えるだろう。
◆集客やCSRの一環として“EV向け充電サービス”が普及する可能性も
また、注目すべきは「バッテリーの充電」の部分で、今回試乗したEVはフル充電には約8時間ほどかかるが、バッテリーの80%程度までの充電ならば急速充電を使うことで30分〜1時間程度で可能だという。EV向けの充電インフラ整備については、東京電力など電力会社が熱心なほか、様々な企業や事業者が「充電サービスの提供」を打ち出している。
保有車両のEV化を表明した郵便局や、パーク24などコインパーキング事業者、さらに今秋には総合スーパー大手のイオンがショッピングセンター駐車場での充電サービス提供を打ち出している。今後、ショッピングセンターやファミリーレストランなどロードサイドに展開する店舗が、集客やCSR(企業の社会的責任)の一環として“EV向け充電サービスの提供”を行う可能性は十分に考えられる。街のいたるところで充電サービスが広がれば、EVの価値や可能性はさらに大きくなりそうだ。