開幕前は「期待薄」の感触だったが…
F1開幕戦のオーストラリアGPは、完走がわずか7台というサバイバル戦となった。トヨタエンジン搭載のウィリアムズでフル参戦緒戦となった中嶋一貴が父親のデビュー戦を超える6位入賞を果たす一方、日本チームのポイント獲得はならなかった。しかし、レギュレーション変更の影響もあって、今季はより楽しめそうという場面が随所に見られた。
日本チームと日本人ドライバーを応援するファンは、ここ何シーズンもフラストレーションを溜め込んでいる。今季もホンダ、トヨタチームの開幕前の記者発表からは、さほど期待できないという感触が伝わってきた。
だが、予選ではトヨタの2台が最終セッションに進んだ。合同テストでのトップ2チームとの差は「昨年の1.5秒ないし2秒から0.7秒くらいになった。」(山科忠TMG会長)というトヨタ流カイゼンの成果が見られた。
◆見せ場をつくったバリチェロ
ヤルノ・トゥルーリ、新ドライバーのティモ・グロックとも途中リタイアになったものの、「コンスタントなポイント獲得」(山科会長)という第1段階の目標に手が届いている印象だった。エンジンを供給しているウィリアムズが緒戦を表彰台(3位)と6位入賞という好スタートを切ったことからも、エアロのカイゼンが進めば、トヨタにも表彰台が見えてきそうだ。
ホンダは予選最終セッションに進めず、11、13番手からのスタート。「レギュレーションが大幅に変更される来季以降のチャンスをものにする」(ロス・ブロウン・チームプリンシパル)という方針から、今季もやはり厳しいのかというのが予選結果だった。
しかし、本戦ではルーベンス・バリチェロが見せ場をつくった。序盤から中盤までの19周にわたり、後ろにつけた昨年のチャンピオン、キミ・ライコネン(フェラーリ)をブロックし続けた。
◆トラクションコントロール廃止で面白み
一時は表彰台圏内まで順位を上げ、現役最多出場で優勝9回という実力を久々に発揮した。結局、バリチェロは失格となるものの6番手でレースを終え、「目標であるポイント獲得が可能な力を見せることができた」(ブロウン氏)。マシンの信頼性という面でも収穫はあった。
オーストラリアGPは、今季緒戦ということや50度Cを超えた路面などのコンディションから完走は7台にとどまった。こうした結果には、車輪空転時の動力制御システムである「トラクションコントロール」の廃止も影響しているようだった。
このレギュレーション変更により、とくにコーナーからの立ち上がりでドライバーの技量が問われるようになっている。もちろん、マシン側でも廃止に対応しているのだが、ドライバーの腕が試されるという点で、F1本来の楽しみが戻ってきたと言える。