三菱『ランサーエボリューションX』には、従来のAWCに改良を加えた「S-AWC」という4WDの統合制御が採用されている。これはACD(アクティブ コントロール デファレンシャル)、AYC(アクティブ ヨー コントロール)、ASC(横滑り防止装置)、ABSを統合制御することで、クルマの安定性と運動性能を大幅に引き出してくれるものだ。
このなかでも注目したいのは、AYCにブレーキ制御を追加することで、限界走行領域での車両挙動をアシストし、高い旋回性能と安定性を実現している点だ。
ランサーエボリューションXの開発責任者を務めた商品企画本部 藤井啓史さんは「AYCにブレーキ制御を追加することで、ランサーエボリューションXはコーナリングの進入時にクルマの向きを変える際に、『エボIX』よりもドライバーの意志に忠実に動いてくれるはずです」
「社内の2.4kmのテストコースの実験データでは、S-AWCを採用したほうが1.5秒早く走ることができるという結果も出ています。また、雪道でもS-AWCを装備している方が、圧倒的に高いスタビリティを発揮してくれます」という。
事実、S-AWCを装備したランサーエボリューションXでテストコースを走ってみると、異次元の旋回性能を見せてくれた。ASCのスイッチを短く1回押してASCをオフにすると、AYCのブレーキ制御が介入し、もっとも高い旋回性とスタビリティを発揮してくれる。
コーナリングの進入時に限界に近い速度域でステアリングを切ると、AYCのブレーキ制御が介入して、クルマのノーズをイン側に向けてくれるのだ。通常ならアンダーステアになる場面でも、上手くコーナリングを完了することができてしまう。
さらにヨーレートフィードバックの制御も採用されているので、ステアリングの舵角と車両の挙動を判断して、正確なAYCとACDの制御を行なってくれる。ここまで旋回性能が高く、その後のコントロールが容易なクルマはほかにはないだろう。