今年度の欠損企業は2割まで拡大
国内市場の低迷を反映して自動車ディーラーの経営が悪化している。日本自動車販売協会連合会(自販連)のまとめによると、会員企業の2006年4-12月期業績は大幅な経常減益となり、調査対象約1200社のうち2割程度が欠損企業という。
店舗投資の拡大など一時的要因はあるものの、底流には新車販売の不振が横たわっている。多くが空前の業績に沸く自動車メーカーだが、マイナス成長時代をにらんだ国内販売部門の経営改善は2007年度の大きな課題だ。
自販連が実施した今年度第3四半期までの業績調査によると、1社平均の売上高は前年同期比1%増と、わずかながら増収を確保した。新車販売の不振を整備などサービス部門の強化で補った格好。
◆「健全体」の販社はトヨタ系などごく一部
しかし、販売費・一般管理費が増加していることから、経常利益は664万円で、同33%もの減益となった。欠損を出した企業の比率は前年の約15%から約2割に上昇している。05年度決算の調査で、1社当たりの経常減益幅が5%だったのと比較すれば、今年度の業績が急速に悪化していることが分かる。
メーカー系列別の詳細は明らかにされていないが、過去最高ペースのシェアを確保しているトヨタ系列や軽自動車の2強(スズキ、ダイハツ)を除き、健全体の販社は少ないはずだ。メーカー側も、手をこまぬいているわけではない。
「国内の市場悪化が(今期の)業績下方修正の一因になっている」(志賀俊之COO)という日産自動車は27日、国内販売の「ネットワーク改革」策を打ち出した。05年4月の完全併売化以来、これまで進めてきた販売体制刷新の仕上げともなる。
◆日産、「負のスパイラル」断ち切る大手術へ
まず、4月に日産本社内に全国を10地域に分けた「地域カンパニー」を設置。今年6月から東海地区を皮切りに、カンパニーを順次、地域統括会社として法人化し、その後連結対象販社の本社機能を統括会社に統合する---という大手術だ。
狙いは顧客に最も近い、個々の店舗を強くすることだ。同時に本社機能の統合によって間接要員を10年度までに半減させ、経営効率を高める。地域ブロックでの販社統合は大型トラック各社ではすでに完了しているが、1980年代までトヨタと国内市場での覇を競った日産もここまで追い詰められたかという感だ。
ただ、市場の縮小−販売費の増大−販社収益の悪化という「負のスパイラル」(志賀COO)を断ち切るには、生半可な手法は通用しない。1960年代からほぼ半世紀続いてきた都道府県別・多チャンネルという自動車ディーラーシップのモデルを破壊することで、マイナス成長時代のひとつの販社像が提示された。