【AutoStanding】自動車販売における、発明=イノベーションの母と父

自動車 ビジネス 企業動向

飲んだら→乗るな

そもそも、飲んだら乗るな。こうした基本が日本にはまだ浸透していないことが痛感させられる事件が頻発しているこの頃である。行政機関職員による飲酒運転に対する処置が軽すぎる、否、誰でもやってしまう可能性があるのだから処置としていきなりの雇用契約における極刑(解雇など)は厳しすぎる、などの議論も活発になりつつある。

こうした大きな動きは各種飲酒運転による事故発生に対する社会の声の高まりによるものであるが、これらの切欠としての法改正は平成14年6月の道路交通法の改正による「酒酔い・酒気帯び運転」の罰則強化や、平成16年11月の「飲酒運転対策」としての更なる罰則の設置などにある。

しかし、特に地方都市等で車が唯一の移動手段の場合、付き合いなどにより朝は車で出勤したにも関わらず、夜は会食に参加せざるを得ない場合などはどうしても存在するだろう。

◆飲酒運転→運転代行サービス

こうした規制の強化にも拘らず必要とされる需要や、新たに発生するニーズに対する新たなビジネスの誕生事例が例えば「運転代行サービス」であろう(勿論、その起源はもう少し古いだろうが)。

自動車運転代行業とは、主に飲酒のため自分の車を運転することができなくなったお客様に代わって、お客様の車を代行運転するサービスであり、通常は運転者が2人1組となってお客様の車にお客様を乗せて、その車に代行事業者の車が随伴する形態で営業している(社団法人全国運転代行協会ウェブページより)。

業法との兼ね合いで各種議論があったり、事故時の保険の問題や、一部の事業者の素行に依然問題があるといった話もあるかもしれないが、最近このサービスの人気は高まりつつあるようで、ある都市では昨今依頼が 1年で最も忙しい年末並みに増加し、増車を考える業者も多いとのことだ。

運転代行では構造的に、最低2人分の人件費がかかるという意味で、同じ距離を走る前提なら例えばタクシーに対して価格優位性を保つのは難しいはずだ(お客様の車について行く車両はお客様を乗せる形にはならないため安価なものに抑えている)。にもかかわらず、相対的に安価で成り立っている理由としては、(1)よほど安い人件費で耐えているか、(2)稼働率がある程度高いレベルにあるか、(3)タクシーの料金そのものがそもそも高いといったことが考えられる。おそらくこれら全てがある程度のレベルで正しいと思われるため、運転代行が伸びていると言えよう。

◆駐車違反→???

また、最近の国内自動車ユーザーにとってのもうひとつの規制強化は駐車違反取締の民間委託による強化であろう。警察庁が発表した改正道交法施行後 3か月の実施状況によると、6−8月の駐車違取締数は大きく増加している(6月が約15万件、7月が約21万件、8月が約24万件)。

飲酒運転(により社会が被るダメージに伴う)規制強化により運転代行サービスといった新たなビジネスモデルが伸びつつあるのと同様に、駐車違反に関わる規制強化対しては駐車場事業者が新たな駐車場の整備などを実施しつつあるが、これに留まらず新たな事業モデルの可能性は有り得るだろう。

以前このコラムでもアイデアを提示した「法人間カーシェアリングビジネス」などの可能性はあるだろうし、駐車場そのものもを斡旋する IT ビジネスなども考えうるだろう。

さらに、例えば、駐車場の場所が少し遠い商店街などであれば、欧米で言うバレーパーキングのようなもの、すなわちお店の前で車を第三者に預けて駐車してもらい、買い物が終わるタイミングで携帯などを通じて駐車場から車を引き出してきてもらうといったサービスだって有り得る。このサービスを夜は運転代行を実施している事業者が昼は請け負えば、稼働率が更に上昇することでかなりの安価でのサービス提供が可能かもしれない。

◆この国で車の使用価値を維持するには

車という素晴らしい移動手段を凶器にせず、また他人の行動を妨げることなくユーザーに自由に移動する喜びを感じ続けてもらうことは、自動車業界に携わる全ての者の共通の願いである。

その意味では(軽自動車はまだしも、登録車に関しては)低迷を続けている国内販売にとって、上に述べたような規制はボディーブローのように効いてきているのではないだろうか。

国内販売市場では、メーカーは海外事業での利益を原資にモデルサイクルを早めたり、多種のモデルを一気に投入したり、ディーラーを経由したインセンティブを導入するといった施策を打っているが、「車の使用価値を維持する」ためのビジネスの育成へと経営資源を振り向けるといったことにも、これまで以上に積極的に取り組まねばならない時代になっているのではないだろうか。

必要は発明の母であると言われるが(Necessity is invention's mother)、発明の父というのはあまり聞かない。

ぜひ自動車メーカーをはじめとする自動車産業の主要プレーヤーには、発明(この場合は、Invention ではなく Innovation と読み替えたい)の父として社会として必要とされるイノベーションの後押しの役割を期待したい。また、そうした父親を我々としても支援していきたい。

《》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集