メルセデスベンツ『Eクラス』のマイナーチェンジを機に追加ラインナップされたディーゼルモデル「E320CDI」に搭載されたディーゼルエンジンは、欧州で「E280CDI」などに搭載されていた排気量2986ccのターボディーゼル(最高出力190psクラス)の改良版。
ピエゾコモンレール高圧燃料噴射装置、可変ノズルターボチャージャー、コールドEGR、メンテナンスフリーDPFなどを装備し、パワーアップ、燃費向上、排ガス低減を同時に実現したという。
ピエゾコモンレール高圧燃料噴射装置は自動車部品大手、ボッシュから供給されるもの。ピエゾとは日本語では圧電素子と表記される技術で、ごく簡単に言うと、電圧を加えると形が変わる物質を用いて弁の開閉を行うというものだ。
機械的に弁を開閉させる従来の噴射装置に比べて構造が単純でレスポンスもよく、排ガス中の有害成分を低減させる多段噴射(1回の爆発行程のなかで数回に分けて燃料を噴射する技術)をよりきめ細かく行うことができるのだ。E320CDIの噴射ポンプの噴射圧は1600気圧、5段噴射となっている。
可変ターボチャージャーは、タービンの吸気側に可変ブレードを採用し、大風量タービンでありながら低回転領域でもレスポンスを高めるという技術。コールドEGRは低温予混合燃焼のことで、排気ガスを一部シリンダー内に再循環させて燃焼温度を下げ、NOx(窒素酸化物)とPM(排ガス中のすすに含まれる粒子状物質)の両方を下げるための技術だ。
メンテナンスフリーDPFは、ぜん息や肺ガンなどの因子という疑いを持たれているPMをトラップするためのフィルター。DPF自体は近年、かなり一般的な技術になりつつあるが、E320CDIではこのDPFをメンテナンスフリー化したのが注目点。PMの蓄積量を自己診断し、一定以上のPMがたまったら摂氏600度程度に加熱して燃やしてしまうというものだ。当初、このシステムはPMを安定的に燃焼させるのが難しいという課題を抱えていたが、「その課題はほぼ解決された」(ダイムラークライスラー関係者)という。
E320CDIのエンジンは、欧州では決して最新設計のエンジンというわけではない。が、これらのテクノロジーによって、充分に先進的なスペックを得ている。乗用クリーンディーゼルが存在しない日本市場では、大いにインパクトがあろう。