【池原照雄の単眼複眼】トヨタの後方プリクラ、フェザータッチの正体

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後ろにも目がついた『LS460』のプリクラッシュセーフティ

トヨタ自動車は、9月に発売するレクサスの旗艦車種『LS460』に同社がもつ先端安全技術をすべて搭載する。これらの技術群は、駐車時のアシストから不幸にも事故に遭遇した時の救助手配までを網羅するもので、新たに「統合安全コンセプト」と命名している。

新技術のひとつ、「後方対応プリクラッシュセーフティ」のヘッドレストには、「へぇー」と思わせるセンサーが組み込まれていた。

トヨタのプリクラッシュセーフティは、2003年の新型『ハリアー』に初搭載され、その後、ドライバーの脇見も検知するなど進化してきた。LS460用ではミリ波レーダーの性能アップやステレオカメラの搭載で歩行者も検知し、緊急回避操作を支援するようにしている。

これらはクルマの前方についてのシステム。今回は後方から急接近するクルマに対するプリクラシステムも実用化した。リアバンパー内に組み込まれたミリ波レーダーで車両を検知、まずハザードランプの点滅で後方車両に警報を出す。

◆意外に身近だった「静電容量センサー」

それでも衝突の危険性が非常に高いと判断すると、前後に分割される「インテリジェントヘッドレスト」の前部がドライバーの後頭部までスッとせり出す。追突時のムチ打ち障害を軽減するためで、このヘッドレストはまさに賢い。

最大ストロークは約6cmということだが、後頭部にわずかに触れた瞬間にせり出しが止まり衝撃を与えることもない。試乗して作動させると羽根で後頭部を撫ぜられた感覚だった。開発担当者にどんなセンサーが入っているのか聞くと「静電容量センサー」だった。

物質(この場合はヒト)が帯びている電気の量を電荷と呼ぶのだが、この電荷の変化を感知するセンサーである。ヘッドレストが後頭部に近づくに連れ電荷は大きくなる。その変化量でせり出すストロークを制御している。

◆台数がこなれるとコストも下がる

調べると、静電容量センサー自体は、粉体塗装の制御や半導体製造装置の位置決めなど産業用から、ノートパソコンで使われる指先でのマウスパッドなど身近に存在していた。トヨタも2000年に実用化した「スマートエントリー」で、ドアノブに手を近づけると作動するキーロック解除に使っているという。

開発担当の岡本一雄副社長は「統合安全コンセプト」を「将来は『ヴィッツ』に至るまですべての車種に搭載したい」と強調していた。

「こんなすごいセンサー使って高くつくだろうな」と、思わず貧乏根性が出てしまったが、「台数がこなれるとコストも安くなる。そのためにも実用化は必要」(岡本副社長)なのだ。近い将来、コンパクトカーにもフェザータッチのヘッドレストが標準装備される日が来るだろう。

《池原照雄》

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