◆ トヨタを凌駕できる数少ないチャンスカーク・カーコリアン氏から提携の提案を受けた時、日産自動車とルノーのCEOを兼務するカルロス・ゴーン社長は血が沸き立つ思いだったのではないだろうか。日産自動車に続いてGM(ゼネラルモーターズ)の再建も自らの采配で行う。その先には日米欧にまたがる世界最大の連合体のCEOポストが待ち受ける---。ひとりの経営者の野望だけが透けて見える奇異な提携交渉が序盤を迎えようとしている。大連合構想はゴーン社長にとって、まさに千載一遇のチャンス。ルノーが日産に資本参加した時のように、GMは瀕死の状態にあり、もう少し時間が経過して再建のメドが立てば、出番はなくなる。一方で3社連合は、生産規模でトヨタ自動車を凌ぐことのできる数少ない組み合わせとなる。これを逃すとトヨタより大きい事業体をつくるチャンスは、少なくともゴーン社長の時代にはもう巡ってこないだろう。◆安い部品より技術力問題は提携の効果だ。どう考えても大きな果実は期待できそうにない。もっぱら指摘されているのは量の効果による調達コストの低減だ。逆に言うと、こうした単純な道筋しか見えてこないということだろう。しかし、いかに部品や資材を安く仕入れることができても、魅力ある技術や車を開発しないことには顧客の支持は得られない。ホンダの福井威夫社長は大連合構想に関連して「これからの10年は規模でなく技術力とブランド力の勝負と考えている」と感想を述べた。もちろん競争力を高めるには一定の規模も必要だが、自前の技術力があってこそブランドも磨くことができるし、競争力につながる。しかるに、たとえば今世紀のキーテクノロジーのひとつであるハイブリッドについて日産は当面、トヨタから購入するし、GMはダイムラークライスラーおよびBMWと共同で開発している。◆ブレーキ役は本当にいらないのか両陣営とも、規模を追求する前に現状の資金や人材でできること、あるいはやるべきことは山積しているのではないか。それにしても、早々にこの件の協議と交渉をゴーン社長に全権委任した日産の取締役会にも疑問が沸く。筆者には取締役会メンバーが「あなたなくして今日の日産はないのだから、お好きにどうぞ」と言っているように見える。「ひとりの栄光のため」に走りそうなこの交渉に、本当にブレーキ役はいらないのだろうか。
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