★下駄からスニーカーへ
たらいで行水する美しい女性の絵姿からは、涼をとる爽やかさが伝わってくる。日本独特の美意識であり、日本の風土から生まれた生活の知恵だ。
タイトなコクピットに身を沈めて、ストレートアームで前方をにらみながら、限界速度に挑戦する、そんなスポーツカーの先入観を見事に裏切ったのが初代ロードスターの印象であった。
不安なくらい体が車外にさらされた見晴らしの良さ、運転もプリミティブで気楽な感じ。庭先のたらいで行水しているような気恥ずかしさとすがすがしさとでも言おうか。欧米生まれのスポーツカーとは一味違うフィーリングの初代ロードスターは日本オリジナルといえる。
いっぽう新型は、重心を低く、しかも車体の中心に近づけけ、加えて大口径のタイヤ、強力なエンジン、そして高剛性の車体と欧州流の方程式で作られている。グローバルカーらしくフットワークの良い新型ロードスターをスニーカーに例えれば、初代ロードスターの日本的なフィーリングは下駄であろう。
新型ロードスターが西欧基準で一人前なったことは喜ばしいが、せっかく見出した新しい感覚、日本オリジナルの発展を見届けたい気持ちは、我がままだろうか。素足に下駄のようなフィーリングも捨てがたい。
西欧的と日本的のどちらのコンセプトが正しいかはわからない。しかし「古い皮袋に新しい酒を注」いだ新型ロードスターの新しい酒は、米の酒ではなく麦かブドウを原料とした酒になったことだけは確かだ。
★古い皮袋に新しい酒を注ぐ
★好きこそ物の上手なれ
★下駄からスニーカーへ