★“ネオ”アメリカンドリームはキャデラックから
50年代、60年代はアメリカ車の黄金時代であった。ハリッド映画でアメリカの生活シーンと一緒にフォード『マスタング』、『サンダーバード』そしてポンティアック『GTO』などの映像が、青春の一コマとして私の記憶に焼きついている。この時代のクルマは派手で夢があり、アメリカの金髪美人と同じく日本の多くの若者の心を捉えて放さなかったのだ。
このアメリカンドリームの時代は、日本でもアメリカ車の人気が高く、地味なヨーロッパ車など一部のマニアの関心の対象でしかなかった。
オイルショック以降、おおらかさが魅力のアメリカ車のダウンサイズ化が始まった。地味なヨーロッパ車を真似るのは、アメリカ人にとって慣れない仕事だった。アメ車が翼を失った鳥にたとえられるごとく惨めな姿になることは、誰にでも想像できた。
それ以来、アメ車は暗く長いトンネルに入ってしまい、現在のようなヨーロッパ車崇拝の時代となってしまったのだ。アグリーなルックスにハイテクメカニズムを満載したヨーロッパ車は確かに優れものだ。しかしクルマが金太郎飴では退屈だし、一つの種だけ栄えるのは自然の法則に反する。
幸いにも最近のキャデラックは妙に気になる。ラブコールを送られているような気がするのだ。切磋琢磨があって始めてクルマの健全な発展が期待されるが、キャデラックがその大役を担う時期になったのであろう。アンチヨーロッパ派でなくても嬉しい出来事だ。
動力性能を誇示する動物的なデザインに対抗すべく、人間の知的創造物らしさくシンプルで幾何学的デザインのアメリカ車の誕生という訳だ。これはアメリカンドリームの時代の陽気で騒がしいアメリカから、インテリジェントなアメリカ、ネオアメリカンドリームの時代の始まりと考えたい。
★抽象的概念から生まれた現代のピラミッド
★“ネオ”アメリカンドリームはキャデラックから
★キャデラックの復活はバウハウスの発展