高級車と聞けばすぐに思い出されるのがクローム(あるいはメッキ)パーツだが、日産『ムラーノ』(2日発表・発売)の外観でヒカリモノと言えば薄く広がるフロントグリルとヘッドライトハウジング、そしてドアノブだけで、メッキモールドは採用されていない。
ムラーノでは大きく張り出したボディサイドのショルダーが、前後ともタイヤに沿ってスロープダウンし、そこにランプを配置することで存在感を保ちながら威圧感を減らしている。このデザインは『マーチ』を連想させ、ブランドとしてのアイデンティティを感じさせている。
メッキモールドでわかりやすい高級感は演出せず、鼻息荒く肩肘を張ったような従来のSUVのイメージもない。
インテリアにも無骨なイメージはない。『フェアレディZ』や『スカイライン』によく似たシンプルな構成要素で、本アルミとアルミ調のパネルがアクセントとして控えめに用いられている。
ダッシュボードは左右を大きな弧で繋いだ形状で、これを日産では「ラグビーボールシェイプ」と呼称している。これは前方はラウンドしたフロントガラスに沿った形状で、手前はセンタークラスターを乗員に近づけて操作性を高めながら、両端を遠ざけて広さ感を演出するためのもの。この造形のおかげで黒い内装色でも圧迫感は緩和されている。
内外ともヒカリモノではなく造形そのもので存在感や個性をアピールするムラーノ。見た目は豪華さと無縁だが、この質の高いデザインこそがアメリカで支持されている理由だろう。
2年前からムラーノが販売されているアメリカ市場について、日産は「主なユーザーは非白人、特にヒスパニック系の30代男性が目立つ」と説明する。近年アメリカで社会の中心的存在となりつつある勢いのヒスパニック系の、事業やビジネスで成功した人が購入するのだとか。
アメリカでも主なライバルはレクサス『RX330』だが、営業担当者によれば、レクサスブランドに対抗してムラーノをインフィニティで販売する予定はないという。
「インフィニティは高級車で、落ち着いたイメージで売るブランド。ムラーノはそうではなく、むしろ『350Z』のようにアクティブなイメージを売り物にしたい。もちろん高級ブランドに負けない高品質感もアピールしていますが、それは“NISSAN”ブランド全体で行なっていますから」とのこと。