【放談会2002 Vol. 7】マツダ、占領軍フォードの失策

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三浦 フォードとマツダの関係はどうでしょう。フォードのことし第1四半期実績は8億ドル(約1000億円)の赤字でした。

牧野 アメリカでのフォード車販売は1〜4月で前年比10.1%の落ち込みです。クルマが売れないから第1四半期の実績も赤字だった。売れなかった理由は何かと言うと、たとえばフォードのドル箱であるSUVが、GMのゼロ金利ローンまたは2500ドルキャッシュバック攻勢に負けたとか、セダンの売れ筋である『トーラス』がライバルであるホンダ『アコード』/トヨタ『カムリ』に加えて日産『アルティマ』が元気のため前年実績を下回ったとか、いろいろありますが、昨年春からのファイアストン・タイヤのリコール問題やジャック・ナッサー前CEOの解任騒動など、世間を騒がせていることが根本にあるのではないかと思います。消費者はそういう部分に敏感ですから、ほかにもたくさんクルマがあるのにわざわざフォードを買う必要はないわけです。

安田 ナッサーが首を切られた以降も、フォード社内は騒がしい。

三浦 PAG(プレミアム・オートモーティブ・グループ)を率いていたライツレ氏も辞めました。PAGはフォードにとってドル箱です。

牧野 破格のボーナスと長期契約で引き止めようとしたがダメだった。その後任が、前マツダ社長のマーク・フィールズ氏なんだけど、フォード社内ではフィールズ氏に勤まるのかという批判がありますね。ただ、PAGはジャガー/ボルボ/ランドローバー/リンカーン(現在、リンカーンは分離)といったフォード外ブランドですから、利益を挙げてくれるといっても、それはグループ決算上の話です。それより、フォードにとって重要なのは、フォード車の販売をテコ入れすることです。

安田 一方、マツダに関して言えば、フォードの支配というのはうまくいっていないように思うんですよ。

牧野 同感です。昨年マツダはニューモデルがひとつもなかった。そんなことは2年半前に分かっていたんです。フォードとマツダが商品計画の突き合わせをして、しかもフォードはマツダが開発中だった車種を止めて、そこまでして調整させたのに、ニューモデルがひとつもない年ができるのを承知で放置した。これは大罪です。

三浦 それが失策だとフォードは認めていないのですか?

牧野 ナッサー派というか、フィールズ氏はナッサーに抜てきされたのですが、フォードの社内にもきちんと経営状況を見ている部署はありますから、さずがにフィールズ氏は昨年秋の時点で「交代候補」にあがっていた。しかし、ナッサー更迭の混乱を抑える意味で交代は見送られた。1月にアメリカで取材したときには、すでに交代は決まっていた。

安田 ナッサーが更迭されてから、フォードは環境技術でのトヨタとの提携をさらに進める方向に出たり、新しい動きが出て来ましたね。

牧野 トヨタからハイブリッド技術を買うという話はナッサーが決めたようですが、じつに安易です。10年以上前のUSABC(米国先進電池協会)に始まって燃料電池まで、政府の補助金を使いまくった揚げ句に『ウチではできません、トヨタから買います』では政府も国民も納得しない。だからトヨタとの提携範囲を広げたのだと思います。ナッサー氏は自動車の話をするよりアナリストや経営コンサルタントと食事をするのが好きでしたから、開発には無頓着だった。

安田 フォードはマツダの実権を握るときだって、実際にはあまり金は使わなかった。住友銀行が足抜けしたかったから、言ってみれば放り出されたわけです。それ以降も、たいした支援はしていない。やっとセダンのニューモデルが登場しますが、それだけでは立ち直れないでしょう。

牧野 マツダが得意とする分野は何かと思うと、『ロードスター』のようなスポーティカーがまずひとつ。それと、今度出てくる『アテンザ』はヨーロッパ向けの重要車種ですが、ヨーロッパでのマツダはそこそこのブランド力はある。安くてもきちんと作ってある良心的なクルマというイメージです。ことしアテンザが出て、来年はスポーツカーの『RX-8』があります。その先にはRX-8のプラットホームをつかった次期ロードスターがあるようですし、アテンザのプラットホームはヨーロッパ・フォードでも使います。遅まきながらマツダ再生への道のりがスターとする。

三浦 フォードが残そうとするほどのブランド力がマツダにはあるのでしょうか?

牧野 『ミアータ(ロードスター)』はアメリカでは人気車だし、ヨーロッパでは北へ行くほどマツダ支持率が高い。これは重要なことです。BMWのようにスポーティ・イメージのプレミアムブランドになれる素性は持っています。

安田 僕は、今でもフォードは日産と組むべきだったと思っている。昔からそういう話はあったのですが、住友銀行の思惑でうまく行かなかった。組み合わせとしては、日産とフォードなら本当の意味で補完し合える。

牧野 そうですね。アジアは日産にまかせて、ミニバンの共同開発はやっていたし、FRスポーツカーも日産の力を借りる。理想的な組み合わせです。逆に、マツダとフォードでは、どうしてもフォード支配という色が濃くなります。PAGのボルボは利益をだしているからフォードも口出しできないのですが、いかんせんマツダはガタガタになった状態でフォードに面倒を見てもらったから、思うように動けない。これはマイナスです。

安田 ビル・フォード氏がどう切り盛りするか、だ。

牧野 ウォレス、ミラー、フィールズと3人連続でフォード派遣のマツダ社長は実績を残せなかった。その間にマツダは、広島の人々にも見放されるような会社になってしまった。今度のルイス・ブース氏には頑張ってもらいたいのですが、やはりビル・フォードがマツダをどう考えるか、ですね。

安田 ビル・フォード氏とルイス・ブース氏の動向を見守りましょう。

《レスポンス編集部》

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