【放談会2002 vol.1】『超大国トヨタ』の野望

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三浦 4月1日、トヨタが中長期経営計画の中で『グローバル15(フィフティーン)』という目標を打ち出しました。2010年に世界の自動車市場で15%のシェアを取るということです。一部の新聞は「非現実的だ」と書いていますが、どうでしょう。

安田 2010年という時期を考えると、けして不可能ではないと思いますよ。ハイブリッド車や燃料電池車が市場に普及し始めるとか、弱いとされてきた欧州市場での販売強化索が実を結ぶとか、15%に向けたプラス要素はいろいろある。トヨタはかつて「グローバル10」、世界シェア10%という目標を打ち出し、極めてそれに近い状態まで持って行った実績がある。2010年まではまだ8年もあるから、その間に15%近くまで到達することは可能だと思う。

三浦 いまのトヨタの施策で15%は可能、ということですか?

安田 目標数値を出すということは、当然そういうことでしょう。トヨタは具体的な数値目標や将来計画を社外に出さない会社、対外的な発言については慎重な会社だったが、それが変わりつつある。ここまで明確な目標を打ち出したということは、確信があるのではないかと思います。

牧野 現状ではトップのGMが14.8%、2位のフォードが12.4%、3位のトヨタは10.2%です。日本の新聞、経済部の自動車担当記者が「非現実的だ」という根拠は何なのか。私には、逆に見当たりません。マイナス要因のほうが圧倒的に少ない。アメリカの「オートモ−ティブニュース」あたりは、もっと冷静に分析していましたよ。張社長も大風呂敷を広げる人じゃないし、トヨタは慎重な企業です。ただ、私自身は、この15%は「心の支え」だと受け止めます。大事なのはトヨタが言う5つのキーポイントです。必要な技術は他社・他業種と提携するとか、世界中に展開している工場では、さらに現地主体の運営に持って行くとか、環境分野ではリーダーであり続けるとか、そういうポイントを押さえないと15%は捕れない。15%へ向かってグループ企業も含めた全従業員の力を結集する、ということです。市場別で見れば、ポイントは北米とアジアだと思います。

三浦 北米では『SCION(サイオン)』という新ブランドをスタートさせますね。

牧野 サイオンは3車種で年間30万台というのが当面の目標なんだけど、トヨタの本心はもっと上っだと思いますよ。たしかに20歳から30歳代前半までの年令層に対する販売比率は日産や三菱よりもずっと低い。いまのうちに手当てしておかないと、将来は大変なことになるとトヨタ自身がよく知っている。だからサイオンを打ち出した。アメリカ市場の将来を押さえるという意味では重要な施策です。アメリカは1国で年間1500万台も売れる市場ですからね。

安田 欧州は「ヤリス(ヴィッツ)」を投入する前のシェアは3.5%ぐらいだったのに、あっという間に4.5%まで行った。この実績はすごい。

牧野 欧州の1%はデカいですよ。フランス工場の稼動とニューモデル投入でさらに弾みが付く。シェア5%になれば、もう街中でクルマをよく見かけるブランドです。トヨタのやり方は巧みで、現地の企業を排除しない。地元に根付いた会社にしてしまう。アングロサクソン的な制圧とは一線を画しています。何と言うか、農業を広めるような方法です。まず販売網を整備し、トヨタ系の部品メーカーも進出させ、それでも地元の部品メーカーに門戸を広げて取り引きし、経済効果はしっかり還元する。世界大恐慌でも起きないかぎり15%ラインは可能でしょう。

三浦 現状で世界の自動車販売台数は5500万台と言われていますが、それを取り合うのではなく、中国などの新市場で確実に販売をのばしてゆく、ということですね。

安田 トヨタの首脳陣がよく言うのですが「世界の人口のなかで自動車の恩恵を受けている人はまだ4分の1にすぎない」と。まだ手付かずの4分の3に自動車を打って行くということを考えれば、新しい市場を開拓できる、そこで負けないという部分は当然ながら念頭に置いている。

牧野 クルマを売り込むためには、道路というインフラが要る。道路とともに電気や電話も整備される。そのプロセスのなかで、トラックもバスも必要になるし、最後はマイカーの需要が生まれる。トヨタで言えば、大型は日野、マイクロカーはダイハツというブランドを抱えています。しかも、トヨタ自身がGM本体やフォード本体とはちがって小排気量中心です。平均すれば1.5lクラスじゃないですか? GMもフォードも、欧州子会社を除くと量販ゾーンは2l以上です。しかも、ハイブリッド車の技術では世界のどこにも負けない。環境負荷を抑えたモータリゼーションを、独力で植え付けることができる企業なんですよ。そこが強い。

三浦 世界のトップ3のなかで、技術とマンパワーが集まる本体が小型車主体なのはトヨタだけです。GMやフォードは、小さいクルマは子会社がやるしかない。中国などの市場を考えると、地の利も合わせて機動力に優れるトヨタが有利なわけですね。

安田 問題なのは、その『グローバル15』がシェアの拡大というより企業規模そのものの拡大となるわけです。トヨタの経営手法、トヨタウェイと呼ばれるものは、全従業員が同じベクトルで仕事をしましょう、というもの。企業規模をさらに地球規模で拡大させる課程で、このトヨタウェイを深く浸透させることができるか。そこが最大の経営課題でしょう。
《レスポンス編集部》

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