ニュー『ステップワゴン』のスタイリングは、一見すると先代からの変化はさほど見受けられない。目を引くのはフロントウインドウの下からピラーを通り、ルーフサイドからリアバンパーまで回り込むグレイのガーニッシュ。思い出したのが、以前、東京モーターショーで出展されたコンセプトカー『J-MJ』だ。
「ラインは基本的にそうですね。J-MJも、停まっているときはなるべく箱で、走り出したらクルマを意識させようという考えでデザインしました。このガーニッシュが全体のアクセントになっています。これがボディーと同系色だと、かなり大きな箱のイメージになってしまうんですよ」と、本田技術研究所のエグゼクティブチーフエンジニアの前川泰久さんはいう。
先代でも採用してきたデザイン手法だが、今回はこれをさらに熟成。角の面を落とし、より強調したそうだ。「このラインは、開発のスタート当初からありまして、今回はベースデザインがほとんどそのまま完成車になりました」
やはりヒット作のモデルチェンジは難しいのでは? 「支持されているスタイルをあえて変化させる必要はないですし、こちらはもっと使いやすくできるように、オーナーさんをはじめできるだけ多くの声を聞いてきました。たとえばリアバンパーは、角だけをガーニッシュにしました。スタイリング効果もありますが、調査したところ、ここは奥様が運転して擦りやすいことがわかったんです。そこで小さなパネルにして、部分交換できるようにしたんですよ」
こうしたマーケットリサーチは、開発スタッフの家族はじめ、ときには高速道路パーキングで他社オーナーにも協力してもらったという。「いってみれば、お客様が作りたいクルマをわれわれがアシストしてできたようなものなんですよね」と前川さんは笑う。