運転席に乗り込むと、アウディならではのクォリティが表現されたインテリア空間が広がる。インテリアの質感では、最近はほかのメーカーの追い上げも著しいが、アウディは『A4』でまた一歩先に進んだ感じがある。
シングルフレーム・グリルがうまく溶け込んだフロントビューもさることながら、新型『A4』はリアビューがいい。優等生っぽい一方であまり主張のなかった先代と違い、ちょっとワルっぽい横長のテールランプをうまく配置したところに魅力を感じる。
今年乗ったミドルサイズカー(欧州Dセグメント)の中では秀逸の一台。
プレミアムスポーツブランドという色がすっかり浸透したアウディ。
3月にまずセダンから上陸したアウディ『A4』は、デフとクラッチの位置関係を見直しフロントアクスルを154mmも前に出した全く新しいプラットフォームにより、オーバーハングを切り詰めた伸びやかなスタイリングと、前後重量配分を最適化。
ハイテクにしてスポーティな4WD「クワトロ」はV6エンジン+4WD。そしてFFの基準仕様には1.8リットル直4エンジン。さらにワゴンボディのアバント系が加わるというにぎやかなシリーズ構成のミッドサイズ・アウディ。
日本の交通環境やライフスタイルに、最もマッチするアウディのモデルが『A4』シリーズだと思っているので、今回の仕上がりには興味津々でした。
エンジンをフロントにオーバーハングし、それによる前の重さを抑え込むべく足を固めた結果、乗り心地は上下に揺すられ続ける。歴代『A4』が持っていた欠点を、150mmほどフロントタイヤを前に移動するだけで解消してしまったのだから、自動車工学というのはやっぱり奥が深い。
最近のメルセデスに乗って感じるのは、「ずいぶんとまろやかになったなあ」ということ。岩のような剛性感よりも、ちょっとフランス車的な柔らかさが匂い立つようになった。アウディはその逆。
一言でいえば、隙がないクルマ…。外装はデザイン、仕上がりとも上質。インテリアは味わいを持ちつつも、適度に事務的。走りのフィーリングはかなり硬めの足回りを持つ。シートの座面も硬めで、とにかくカッチリした印象に仕上がっている。
Dセグメントのプレミアムカーというと、BMW『3シリーズ』やメルセデスベンツ『Cクラス』など強力なライバルがひしめいている。その中で新たなアウディ A4は、先進技術を惜しみなく使い、クリーンで未来志向のプレミアムカーを目指している。
アウディA4は競合他車と見比べる時に、比較的地味に感じる。それをどう受け取るかが最初のハードルになるだろう。控えめでいい、と思った人のために話を進めると、ドアの開閉音をはじめとした作りが競合他車よりも緻密に感じられるはずだ。
新型『A4』のデザインに、ボクはアウディの「心変わり」を感じる。FFを基本とするレイアウトだが、デフの位置を前進させてフロントオーバーハングを短縮したプロポーションは、むしろFRのそれに近い。
アウディ『A4』は欧州のカンパニーカーとしてのニーズにピッタリハマる、折り目正しさを持ちあわせたセダンだ。このクラスでライバルにあたる、メルセデスの『Cクラス』やBMW『3シリーズ』がやや高価になっている傾向にある。
今度の『A4』、ボクはとくに「アバント」と呼ばれるワゴンにまいっている。知的で繊細で優雅にして強靱。仕立てや乗り心地はいいに決まっている。クワトロの安定感の高さが素晴らしいことも誰もが百も承知だろう。