最近のボルボはちょっと違う。デザインが洗練されて色っぽい。この『S60』も、単に「安全第一」といった工事現場の標語のようなカタさも頑固さもなくなり、あら、どこのセダンかしら? と、思わず目を留めてしまう。
アウディが醸し出す雰囲気は女ゴコロをくすぐるとかねてから書いてきたけれど、コンパクトなこのサイズになっても、そういうところはまったく失わないのにはまいった。
この大きさ。この存在感。たしかに顔つきはMINIっぽいし、雰囲気はMINIなんだけれど、これだけ大きなボディになって、MINIって言ったらいけないんじゃないの?
新しいものは苦手である。なんたって取扱説明書が読めないし。だから電気自動車って言われても、やれ航続距離が短いだの、やれ充電場所がないじゃんだの、見合いの相手の粗探しよろしく、欠点探しばかりしていた。
ミニバン戦国市場の日本において、求められるものは、シートアレンジの多彩さ。でも、このところ、ひとりで乗ってもちゃんと走るクルマが求められてきた。
だっら~ん。この感じ。このゆるんだ感じ。なにも考えず、ただ、ほわんほわんとしたサスペンションから伝わる揺れに、体を任せるこの感じ。たまりません。
シートベルトが黄色いというだけで、人はどうしてこんなに興奮するんだろう。いや、グラマラスなボディラインを見た段階から、脈拍は2割くらい早くなっているんだけれど。
運転席に座ったとたん、デジャブかと思った。この感覚。この大きなガラス面積から外が見渡せる独特の感覚。前に同じ体験をしたことがある……なんだっけ? そうだ、観覧車だ!
“RS”の名を持つスポーツモデルゆえ、エアロパーツで強面風に仕立てられたというのに上品で優美な貫禄がにじみ出る。アウディのデザインにはいつもながら恐れ入るばかりである。瞬発力を表現する背の低いボディ。
乗ったとたん、まあ、口があいちゃうくらいの車内の広さ。運転席では、フロントウィンドーあたりまでが遠くて広々感。後部座席に座ったら、足を組めちゃう余裕の空間。