BYD『ラッコ』は本当に“日本に最適な軽EV”なのか? 日常使いで見えた利点と課題

試乗したBYD RACCOの最上位グレード「300プレミアム」
  • 試乗したBYD RACCOの最上位グレード「300プレミアム」
  • 軽自動車としては珍しい6Way電動調整機構が備わり、前後スライド、リクライニング、座面の高さを電動で細かく調整できる
  • リアリートはスライドも可能で、300プレミアムにはアームレストも装備される
  • 同じ300プレミアムのブラック色のインテリア。こちらの方が汚れが目立たないので使いやすそうだ
  • 「300プレミアム」には電動パワーシートが装備されるが、メモリー機能はない
  • 後席はチップアップできるため、高さがあるものを積載するのに役立つ
  • 後席シートをたたむとほぼフラットなカーゴルームが生まれる。間口も低めで荷物の出し入れはしやすい
  • 軽自動車では当たり前の装備となっている、折りたたみ式トレイやスマホ用ポケットなども装備した

BYDが日本市場専用に開発した軽EV『RACCO(ラッコ)』。海外メーカーが日本独自の軽自動車規格に合わせて専用モデルを開発しただけでも興味深いが、実車に触れてみると、BYDが重視したのは単なる「軽規格への対応」ではないことが見えてくる。

RACCOが選んだのは、日本でも人気の高いスーパーハイトワゴンだった。このタイプの軽自動車に求められるのは、絶対的な走行性能よりも、乗り降りのしやすさや室内の広さ、荷物の積みやすさ、そして家族を乗せたときの快適性である。

そこで今回は、RACCOをEVとして評価するだけでなく、「日常の足としてどれだけ使いやすいのか」「家族を乗せたときの乗り心地はどうなのか」という視点からチェックしてみた。

◆軽自動車とは思えないインテリアの質感

BYD RACCO 300プレミアム

今回チェックしたのは最上級グレードの「300プレミアム」。運転席に座ってまず印象に残ったのが、インテリアの質感だった。ダッシュボードには硬質素材が使われているものの、造形や表面処理が巧みで、見た目にチープな印象はほとんど感じない。

300プレミアムに採用された合皮シートも質感が高く、肌触りは良好だ。シートそのものにも十分なサイズがあり、軽自動車だからといって窮屈さを強く意識することはなかった。

最初の試乗車はインテリアがホワイト系でまとめられ、見た目には室内を華やかに見せていたが、長く使っていると汚れが目立ちやすそうだ。日常的な使いやすさを優先するならブラック系を選ぶのがオススメかもしれない。

一方、細部を見ると、リアドア下部にワイヤーハーネスのカバーが見えてしまうなど、もう少し仕上げを煮詰めて欲しいところもあった。

◆電動パワーシートは魅力的だが惜しい部分も

軽自動車としては珍しい6Way電動調整機構が備わり、前後スライド、リクライニング、座面の高さを電動で細かく調整できる

300プレミアムのユニークな装備が運転席の電動パワーシートだ。現在の軽自動車では極めて珍しく、運転姿勢を細かく調整できるのは大きなメリットとなる。

一方、残念なのがメモリー機能を備えていないことだ。

たとえば夫婦で一台のクルマを共有する場合、ドライバーが替わるたびにシートポジションを合わせ直す必要がある。電動シートだからこそ、ボタンひとつで自分のポジションに戻せるわけで、メモリー機能があれば、装備の価値はさらに高まっただろう。

◆荷物を持ったまま開けられるスライドドア

路面に照射される光に足をかざすとドアが開く。今まで何でなかったのかと思うぐらい使いやすい
BYD RACCO 300プレミアム

RACCOで便利だと感じた装備のひとつが、リアのスライドドアだ。

物理キーを持って車両に近づくと、足元の路面に円形のライトが映し出される。そこへ足をかざすだけでスライドドアを開閉できる仕組み。足をかざす場所が光で示されるので迷いにくく、両手に買い物袋を持っているときや、子どもを抱いている場面ではかなり役立ちそうだ。

この機能は派手な先進装備ではない。しかし、毎日の買い物や子どもの送り迎えなどで使われるスーパーハイトワゴンでは、こうした小さな便利さこそ重要だ。こうした配慮は日本での使い勝手をよく考えて開発されたことが伝わってくる

また、スマートフォンをかざすだけで施錠・解錠できるNFCキーも便利だ。ただ、スマートフォンのバッテリーが切れてしまえば利用できない。万一を考えれば物理キーも携行しておいた方が安心だろう。

◆シートアレンジを含めた荷室の使いやすさは好印象

後席はチップアップできるため、高さがあるものを積載するのに役立つ

軽スーパーハイトワゴンとして注目したいのが、後席と荷室の使い勝手だ。

後席を折りたたむと座面が沈み込む構造となっており、荷室から続くフロアをフラットに近い状態にできる。これによって大きな荷物を積みやすく、軽自動車の限られたボディサイズを効率よく活用できる。

さらに後席にはチップアップ機構も備わっているため、背の高い荷物を載せたい場合にも対応可能としているのも使いやすい。

4人乗車時には普通の軽自動車として使い、必要に応じてシートをアレンジして積載スペースを拡大する。日本の軽スーパーハイトワゴンが得意としてきた使い方を、RACCOもしっかり研究していることが伝わってきた。

◆多機能な10.1インチディスプレイ

カーナビは装備せず、スマートフォンを接続(ワイヤレスも可)してApple CarPlayやAndroid Autoを使う

インパネ中央には10.1インチディスプレイが備わる。サイズは十分で、画面そのものの視認性にも不満はない。

専用カーナビは搭載されず、ナビゲーションを使う場合はスマートフォンを接続して、そのナビアプリを利用するスタイルとなる。さらに、車両側の機能についてはかなり多彩で、ADASの詳細設定やエネルギー消費状況の確認、電子マニュアルの閲覧なども、このディスプレイから行える。

面白いと思ったのが「洗車モード」だ。これを選択するとウインドウが閉じ、オートワイパーなども無効になる。洗車機を利用する際などには意外に便利な機能となるかもしれない。

USB端子も複数のタイプが用意されており、スマートフォンを中心に使うことを前提とした装備構成となっている。

メーターパネルは全画面を液晶表示としたが、表示内容は結構小さめだ

ただ、機能が豊富な一方で、インターフェースには改善の余地がある。文字やアイコンが全体に小さめで、メニューによっては階層が深く、目的の機能を探すのに少し時間がかかる。また、パワースイッチが空調スイッチと同じ並びで、同じデザインで配置されているのも最初は戸惑った。

毎日乗る軽自動車だからこそ、主要な操作については、もう少し直感的に扱えるよう工夫して欲しいところだ。

◆日本仕様への配慮と「あと一歩」の部分

《会田肇》

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