「ついに、新たなステージへ挑む時が来た」
TOYOTA GAZOO Racing(TGR)体制での初参戦――それは、これまで積み上げてきたすべてをぶつける瞬間でもある。世界ラリーレイド選手権(W2RC)第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」(ポルトガル)で、三浦昂選手はその挑戦をスタートさせた。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」今回の参戦は単なるステップアップではない。これまでのキャリアの積み重ねが、ひとつの転換点を迎えた結果でもある。
キャリアの転換点となった“TGR移籍”
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」
その背景には、三浦選手自身が歩んできたラリーレイドでの経験がある。ダカール・ラリーでは、トヨタ車体(TLC:Team Land Cruiser Toyota Auto Body)による市販車部門での戦いの中で、12連覇という輝かしい実績を築き上げた。しかし、その連勝記録は2026年大会で惜しくも途切れることとなった。
三浦 昂選手(左)アルマン・モンレオン選手(右)そうした節目を経て、三浦選手にとっても次のステージへの挑戦が現実のものとなる。これまでトーヨータイヤ陣営の一員としてBAJA World CupやW2RCのスポット参戦で積み重ねてきた実績をベースに、TOYOTA GAZOO Racingへ正式加入が決定。参戦カテゴリーも、より高い総合力が求められるW2RCへの本格的な参戦がはじまった。
単発での挑戦ではなく、1年間を通じて競い合うシリーズの中で、自身のドライビングとマシン理解を磨いていく。今回のポルトガルは、その本格参戦のスタート地点と位置づけられる大事な1戦でもあった。
“究極のSUV”と「OPEN COUNTRY」で挑む新たなステージ
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」舞台となるのはW2RC最高峰の「アルティメットクラス」。ドライブするのは、ハイラックスのシルエットをまといながらも、その実態はまったく異なる設計思想で生み出されたT1+マシン、トヨタ『ダカール GR ハイラックス(DKR GR Hilux)』だ。
三浦選手自身もこのクルマを「ハイラックスをベースにした車両ではなく、オフロードを最速で走るために作られた純粋なレーシングカー」と表現する。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」「新型車はエンジンや基本構成こそ従来モデルと共通ですが、シャシーが新設計となり、重量バランスが大きく改善されています。低重心化とマスの集中によって、より俊敏で正確なハンドリングを実現。ドライバーの入力に対して非常に素直に反応するため、意図したラインをトレースしやすい特性になっています」と語る。新車のポテンシャルアップにアジャストすることも課題の1つだ。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」そのパフォーマンスを支える足元には、長年に渡ってタッグを組んできたトーヨータイヤの「OPEN COUNTRY M/T-R」が装着される。三浦選手の実績に裏打ちされた信頼が、確かな証拠だろう。タイヤは砂地、グラベル、マッドと刻々と変化するラリーレイドの路面に対応しながら、安定したコントロール性を発揮する重要な役割を担う。強力なグリップを安定して発揮するタイヤがなければ、過酷なラリーレイドを戦い抜くことはできないからだ。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」一方で、このT1+マシンはドライバーに対して極めてシビアでもある。操作に対する応答性が高く、わずかな入力の違いがそのまま挙動に現れる。つまり、マシンのポテンシャルを引き出せるかどうかは、ドライバー自身の精度に委ねられる部分が大きい。しかしながら、タッグを組むアルマン・モンレオン選手(コドライバー)は昨年のW2RCでシリーズ2位に輝いた実力者。三浦選手の走りを支える強力なパートナーだ。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」だからこそ今回のポルトガルは、「結果」以上にその「プロセス」が問われる1戦だった。新たな体制、新たなマシン。そのすべてを受け止めながら、自身のスキルをどう適応させていくのか。そんな5日間の戦いを、三浦選手へのインタビューで振り返っていく。
新体制で臨んだポルトガル戦、シビアなコンディションを見事に駆け抜けた
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」今回のラリーポルトガルは、昨年に続く参戦となりましたが、あらためて印象的だったのはステージのテクニカルさでした。細い林道や畑の間を縫うようなレイアウトで、ライン取りひとつでタイムもリスクも大きく変わる。ステージの雰囲気としてはどちらかというとWRCのような、非常に神経を使うタフなラリーだったと感じています。(三浦選手)
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」STAGE1(SS1-2):想定外のダメージとリスタート
初日はポルトガルらしい砂地ベースのツイスティなステージ。切り株や細かな凹凸が多く、さらに雨によって路面コンディションはかなり不安定でした。その難しい路面を走行中、僅かにメインルートの判断を誤りマシンの下回りをヒット。序盤からダメージを負う厳しい展開となりました。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」ただ、メカニックが迅速に対応してくれたことで、2日目以降も走行を継続できる状態まで修復し、まずはレースを続けられるという安心感を得られたことが、この日の大きなポイントでした。(三浦選手)
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」STAGE2(SS3):滑りやすい路面コンディション、完走を重視して確実に
2日目はポルトガルからスペイン方面へ向かうステージ。路面は砂からハードパックのグラベルへと変化しましたが、雨がさらに強まり、極めて滑りやすい状況となりました。少しでも無理をすればすぐにコースアウトしてしまうようなコンディションの中で、どこまで攻めるかの判断が常に求められました。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」本来であればさまざまなアプローチを試したい局面でしたが、この日はリスクを抑え、確実に走り切ることを優先。結果としてペースは抑え気味でしたが、距離を重ねて経験を積むことにフォーカスしました。(三浦選手)
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」STAGE3(SS4):感覚の一致、確かな手応えを掴んだ1日
スペイン・バダホス周辺のループステージは、昨年走ったエリアも多く、ある程度のイメージを持って臨める環境でした。依然として路面はウェットでしたが、ここまでの走行でマシンのサイズ感や挙動への理解が進み、ドライ区間では積極的にペースを引き上げました。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」ブレーキングやターンインのタイミング、アクセルの入れ方などを細かく調整しながら、「こう操作すればこう動く」という感覚が徐々に噛み合ってきた印象です。アルマンド(コドライバー)からもポジティブなフィードバックがあり、自分の中でも方向性に対する確信を得ることができました。(三浦選手)
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」STAGE4(SS5):トップランナーとの比較で、再確認できた現在地
この日はスペイン・バダホスからポルトガル・ローレへ戻る、ポルトガル戦で最長のロングステージ。コンディションは依然として難しいものの、ドライ区間も増え、ペースを上げられる場面が出てきました。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」この日はスタート順が有利になる“ジョーカー”を使用し、トップ勢に近いスタートポジションから走行。その結果、得意な路面ではトップドライバーたちとほぼ同等のペースで走れることを確認できました。一方で、荒れた路面やブラインドコーナーが続くセクションではタイム差が出るなど、課題も明確に。ただし、自分が苦手とする領域や改善すべきポイントが具体的に見えたことで、次のステップに向けた方向性を整理できた1日でもありました。(三浦選手)
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」STAGE5(SS6-7):4日間の集大成で成長を実感、総合14位でフィニッシュ
最終日はローレ周辺での約100kmのループステージ。WRCでも使用されるエリアで比較的走りやすい一方、アップダウンが大きく先の見えないセクションも多いコースでした。その中でも、終始落ち着いてマシンをコントロールできたことで、車両感覚がしっかりと身体に入ってきている実感がありました。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」ライン取りやスロットル操作にも余裕が生まれ、意図した走りを組み立てられるようになってきた。4日間の集大成として、「できること」と「課題」を明確に整理できた1日でした。(三浦選手)
マシンのポテンシャルは高い、「OPEN COUNTRY」と1歩ずつ未来へ進む
三浦 昂選手今回のラリーを通じて改めて感じたのは、T1+マシンの持つポテンシャルの高さです。その性能を引き出すには、ドライバーとしての理解と精度が不可欠であり、まだまだ伸びしろがあると実感しました。タイムを追うだけでなく、「どう動かすべきか」「何がベストか」をひとつひとつ積み重ねていく。そのプロセスはシンプルに見えて、実際には非常に難しいものです。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」そうした中で重要になるのが、クルマの状態を正確に伝えてくれるタイヤの存在です。今回装着した「OPEN COUNTRY M/T-R」 は、これまでのBAJAシリーズやW2RCでの開発を通じて熟成されてきたモデルで、あらゆる路面において安定したパフォーマンスを発揮してくれました。
W2RC 第2戦「BP Ultimate Rally-Raid Portugal」グリップの立ち上がりが分かりやすく、スライドコントロール時の挙動も非常にリニア。その結果として、ドライバーが安心してトライできる環境が生まれ、ドライビングの幅を広げることにつながっています。タイヤの進化に対して、自分自身のスキルも引き上げていく必要がある――その意識を強く持てたことも、今回の大きな収穫でした。
最後に、次戦アルゼンチンにむけてコメントを聞いた。
三浦 昂選手「かつてダカールで走った南米のルートに再び挑めることは、大きなモチベーションになっています。砂丘やオープンデザートなど、自分が得意とする路面が中心になる見込みで、今回ポルトガルで得た経験をさらに活かせる舞台になるはずです」
「事前のテストでさらにドライビングの精度を高め、よりレベルアップした状態で臨みたい。そして次戦では、今回以上にラリーそのものを楽しめる走りを見せたいと考えています」と、まっすぐに力強く語ってくれた。
三浦選手の次なる戦いは、アルゼンチンで5月26日より開催されるW2RC第3戦「Desafío Ruta 40」。レベルアップを続ける、熱い走りに注目してほしい。
TOYO TIRES『OPEN COUNTRY』の製品ラインアップはこちら《取材協力:トーヨータイヤ》









