1月17日、本田技研工業(以下ホンダ)が“「人間尊重」のフィロソフィーに基づく人事の取り組みについて”と題して、記者発表を行った。ホンダの人事採用や育成に関する方針や戦略についての発表で、大手自動車メーカーがこういった発表を行うのは異例のことだ。
今回発表を行ったのは、取締役代表執行役副社長の貝原典也氏とコーポレート管理本部人事統括部長の安田啓一氏で、ホンダにおける人事の哲学と時代に合わせた育成と採用の施策が語られた。

重厚長大産業らしくない人事と風土
ホンダは日本を代表する歴史ある大企業だが、社内では「部長」や「課長」といった肩書ではなく、すべて「さん」付けで呼び合う。取締役は社長も含めて取締役用の大部屋で執務し、いつでも「ワイガヤ」(ワイワイガヤガヤ)と徹底的に議論を戦わせる社内文化が上から下まで徹底されているという。「2Way」という独自の1on1(ワンオンワン)面談を行い、現在はコアタイムがない自由度の高いフレックスタイム制やリモートワークも可能。さらに柔軟な定年制など、その人事施策は先端IT企業のように先進的だ。
学歴は一切考慮しない完全な実力社会で、採用書類に出身校の記入欄はない。「2階にあげて梯子を外す」というスパルタ教育主義で、与えられた仕事の40%をこなせるようになったら、裁量を任せる。それによって、自立と成長を促すのだという。
「主体性」「公平」「相互信頼」を人事の基本3原則にして、「人間尊重」をフィロソフィー(哲学)にしてきたという。

150億円を投入し、採用も育成もソフトウェア重視
ホンダは年間2300人という国内最大規模の採用を行っているが、2025年度はキャリア採用(中途採用)1500名、定期採用(新卒採用)1000名を予定している。キャリア採用が65%を超えるというのは、国内大手企業としては、かなり大胆なことだ。ホンダは昔からキャリア採用比率が高く、キャリア採用3割、定期採用7割程度だったが、近年はキャリア採用の比率がどんどん増えて6割以上になった。また、キャリア採用の約6割がソフトウェアをはじめとする注力領域だという。
ソフトウェア重視の姿勢はオフィス拠点の増設にも現れており、従来の栃木県と東京(青山、六本木、赤坂)に加えて、2023年10月の大阪を皮切りに名古屋、福岡、大宮と拡大してきた。さらに2025年4月に大阪、2026年初めには東京に新オフィスを増設するという。
さらに海外採用も拡充し、インド、ベトナムなど10ヵ国以上で年間60名を採用。日本語を要件としない採用を拡大する。インドはソフトウェアエンジニアを多く輩出するIT大国として有名だが、ベトナムのIT産業も近年急速に発展し、ソフトウェアエンジニアが増えている。