自動で消灯するウインカー、直感的操作のジョイスティックも…常識に挑戦するヤマハの「次世代スイッチ」

ヤマハ MT-09、XSR900GPに採用された「次世代スイッチ」
  • ヤマハ MT-09、XSR900GPに採用された「次世代スイッチ」
  • 複雑な構造の有機的なパッケージングに「フレキシブル基盤」が貢献
  • 機能モジュール開発部の堀内さん、長崎さん、池谷さん(左から)
  • ヤマハ MT-09 新型
  • ヤマハ MT-09 新型
  • ヤマハ XSR900GPに採用された次世代スイッチ
  • ヤマハ XSR900GP

ヤマハ発動機の新型ネイキッド『MT-09』、そして80年代GPマシン風の外観で話題の『XSR900GP』には「次世代ハンドルスイッチ」が採用された。ライダーが直感的に操作できるよう設計されたこのスイッチは、「フルスクラッチで、今後のスタンダードにもなり得る“次世代スイッチ”を目指した」という。

機能面のトピックは、ウインカーとジョイスティックだ。多くのウインカーは、左手親指で操作するレバーを左右にスライド、キャンセルは中央を押し込む操作だが、この次世代スイッチでは左手親指で操作するのは変わらないが、左右スイッチを押し込む(フルクリック)ことで点灯、さらに15秒経過、かつ150m走行で自動キャンセルとなる機能をもつ。さらにスイッチ半押しで車線変更時などに便利な「3回点滅」を可能とした。

走行モードの変更などの操作には、同じく左手親指で操作するジョイスティックを採用。「ゲーム機やスマートフォンなどに慣れたライダーとの親和性が高い」として、直感的な操作を実現している。

ヤマハ XSR900GPに採用された次世代スイッチヤマハ XSR900GPに採用された次世代スイッチ

これまでの開発では既存品の流用・応用によって製品ごとの最適を追求してきたというが、新型MT-09、XSR900GPでは今後のスタンダードにもなり得る次世代スイッチをめざし、一から設計をおこなった。

「あくまでも暗黙知でしかないのですが、“人が触れる部分を大切にする”というマインドは、この会社のものづくりに深く根づいた文化であり、また流儀の一つだと感じています」と機能モジュール開発部の長崎義貴さんは語る。

◆数々のテストと「フレキシブル基盤」が実現した

機能モジュール開発部の堀内さん、長崎さん、池谷さん(左から)機能モジュール開発部の堀内さん、長崎さん、池谷さん(左から)

同部門のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)チームでは、人間工学に基づいてスイッチやレバー、ペダル類など、ライダーとマシンの接点となる各種機能部品の要素研究から開発までを担っている。

バイクの運転中、ライダーはさまざまな手元操作を行う必要がある。ウィンカーやライト、ホーン、走行モードの切替など、多岐にわたる操作を誤操作なく行うためには、スイッチの配置や形状、タッチ感が重要。これを実現するためには、ヒトの構造や感覚を深く理解することが欠かせないという。

スイッチの設計は非常にデリケート。親指を引く動作を解析すると、指先を軽く押し当てることで感触を確かめ、その感触をきっかけに引く動作に移ることがわかる。さらにその引き始めた指を、今度はライダーの意思通りに止めるためのデザインも重要で、その最適解を導き出すために、クレイモデルを用いた繊細な検討が繰り返されたという。

また、対応力や汎用性を高めるために、指の長短やグローブの厚みなど、さまざまな条件で走行実験が行われた。開発メンバーの池谷亮介さんは、「ストロークやクリック感の微妙な違いで気持ち良く感じたり、逆に違和感が出たりします。ですから走行実験の現場には、いくつもの仕様を持ち込んで比較検討していきました」と語る。

複雑な構造の有機的なパッケージングに「フレキシブル基盤」が貢献複雑な構造の有機的なパッケージングに「フレキシブル基盤」が貢献

操作性の高いスイッチ配置、そしてコンパクトな設計を可能としたのが、ヤマハとして初めて採用した「フレキシブル基盤」。従来の板状の基盤とは異なり、折り曲げたり、自由なレイアウトが可能なもので、これを採用することで内部構造をまとめことができるなど設計の自由度が大幅に向上。コンパクトな設計、ライダーの欲しい位置にノブを配置できるなどのメリットをもたらした。

さらに基盤とスイッチの間にラバーを挟み込むことでクリック感、防水性を向上させている。

求めたのは、直感的操作で扱えるユニバーサルなスイッチ。長崎さんは、「操作に関わるストレスやノイズを取り除くことで、ライダーは純度高くライディングを楽しめるはず。そこに貢献できたら本望」と語っている。

ヤマハの“人機官能”思想が生んだ常識への挑戦。スイッチひとつにもその情熱が注がれている。

《レスポンス編集部》

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