上海モーターショー2023の取材中に、現地の人から「EVがライフスタイルを変えた」という話を聞いた。なんでもEVを「第二の家」という表現もあるらしく、車の中でリラックスしたり動画を見たりして楽しんでいる人がいるそうだ。
具体的な利用シーンをいくつか挙げてもらった。ひとつめは、サラリーマンがお昼休みの間に仮眠するのに使う、というもの。中国のお昼休みは1時間半から2時間と長く、ランチを取ったあとに自分のEVで休憩したり、仮眠するというのは割とよくある使い方らしい。また、母親が子供を塾に送っていき、塾が終わるまでの2時間ほどのあいだ、その場で車中で待ちながら過ごすという使い方もあるそうだ。教育熱心な中国らしい利用シーンだと妙に納得してしまった。
いずれにせよ、このように“EVを部屋として使う”使い方が消費者の間で認知され、第二の家という言葉が広まったのだろう。そして、車内で快適に過ごすための装備が、上海モーターショーでは様々提案されていた。
EV先進国である中国でのEVの使われ方は、これからのカーライフのヒントになるはずだ。本稿ではそのような「第二の家」の最新の装備を紹介したい。
ゼログラビティシートとは
ゼログラビティ*=無重力シートとは何かというと、リアシートに装備されていることが多いのだが、ボタンひとつでシートがリフトアップし、背もたれが倒れつつオットマンがシート下からせり出してくる。それと同時に前のシートが前方に移動してスペースを開けるというものだ。その際の乗員の姿勢が、無重力状態で宙に浮いているような姿勢になるので、ゼログラビティと言われている。前述したお昼休みのショートナップにうってつけの機能だろう。
*元々はNASAの理論
ゼログラビティと呼んでいるのは、上海汽車とアリババの合弁会社であるIMモーターズ(智己汽車)で、『LS7』という主力SUVに装備されている。同様の機能は、長安汽車系の深藍『S7』、BYD系のDENZA『D9』、新興EVブランドの理想汽車『L9』、AITO『M7』、NIOのSUV各モデル、そのほか各社のMPVのほとんどに装備されていた。