4月10日、JR北海道のキハ183系一般車が札幌~網走間の臨時特急『キハ183系オホーツク』の運行を最後に引退し、36年余りの歴史に終止符を打った。
■ラストランをひと目見ようとヒグマまで?
キハ183系は3月17日、札幌~網走間の『オホーツク』、旭川~網走間の『大雪』を最後に定期運行を終了。その後は臨時列車やツアー列車として札幌~函館間や札幌~稚内間を巡った。

そして、キハ183系が最後まで活躍した石北本線にちなんで最後の列車となった『キハ183系オホーツク』は4月9日に札幌を出発したが、その注目度は高く、速度が落ち、停車時間が長くなる石北本線内では沿線の道路で渋滞した箇所がいくつかあったという。
またTwitterでは、かつて駅だった石北本線の上越信号場で列車内からヒグマを目撃したというツイートがあった。沿線には撮影者が何人もいただけにヒヤリとする情報だったが、実際に、キハ183系は野生動物と幾度も衝突しており、気象以外でも厳しい条件に晒され続けていたことを伺えるひと幕だった。

石北本線内の各停車駅では「ありがとうキハ183系」と書かれた横断幕を掲出するなど、ラストランムードが演出されており、終着の網走駅では復刻塗色車の前に撮影ゾーンを設けるなど、管理態勢が徹底されていたようだ。
正真正銘のラストランとなった4月10日は、終着・札幌に近づいた車内放送で「キハ183系に感謝状を贈ります」という演出も披露。札幌駅では2015年の『北斗星』や『トワイライトエクスプレス』のラストランに負けないくらいの群衆に取り囲まれ、苗穂運転所へ引き上げていった。
■改造続きだったキハ183系…オリジナルの足回りは3両だけ
ラストを飾った編成は、札幌方から[5号車]キハ183-1555[増22号車]キハ182-508[増21号車]キハ182-7554[4号車]キロ182-7553[3号車]キロ182-7551[2号車]キロ182-504[1号車]キハ183-8565の7両編成(遠軽~網走間は逆編成)。

いずれも1986年以降に登場した、N183系(110km/h対応)、NN183系(120km/h対応)で、ハイデッカーグリーン車3両を含む豪華編成となっていた。
キハ183系は、130km/h対応の振子式キハ281系特急型気動車が1994年3月に『スーパー北斗』でデビュー登場したのを機に、同じ函館~札幌間を走るキハ183系『北斗』に130km/h対応改造車(2550・3550番台)や120・130km/h両対応車(4550番台)が登場。さらに2014年度からは老朽エンジンの取替え対策としてキハ261系をベースにした460PSのものに交換する重要機器取替工事が行なわれており、7550・8550・9550台という複雑な番台区分が発生していた。
今回のラストランでは、交換前のオリジナルエンジンを持つ車両は5号車、増22号車、2号車の3両で、これを狙って乗車したマニアもいたほどだ。

このうち3号車のキロ182-7551はエンジン換装はされているが、もともとは1986年にキロ182-501として誕生したハイデッカーグリーン車のトップナンバーだった。
7550番台や8550番台の車両は130km/h対応に改造されていたものの、2018年7月にキハ183系の運用が『オホーツク』『大雪』のみとなったため、未改造車と併結するために120km/h対応にされた経歴を持つ。
このようにラストランの編成は、N183系、NN183系でさまざまな経歴を持つ車両がひとつに集約されており、JR北海道の粋な計らいを感じた。
■今後はノースレインボーにキハ143…まだまだ続くラストラン
キハ183系一般車の引退で、JR北海道のラストランはひと区切りついた感があるが、JR北海道が4月3日に発表した事業計画では、ワンマン電車の737系やH100形気動車の増備が盛り込まれており、まだまだ目を離せない状況だ。
直近では、5200番台「ノースレインボーエクスプレス」が4月30日、釧網本線での運行を最後に引退することになっており、同車が引退すると北海道のキハ183系はすべて消滅。残るキハ183系はJR九州の特急『あそぼーい!』に運用されている1000番台のみとなる。

737系は5月に室蘭本線の普通列車を中心に投入される予定となっており、かつて札沼線(学園都市線)で活躍していた客車改造気動車(PDC)のキハ143が同線から撤退する。30年以上の経年を考慮すると引退する可能性が高いと見られる。

そしてH100の増備はキハ40の運用範囲をさらに狭めることになり、今後は根室本線滝川~東鹿越間や道南いさりび鉄道を含む函館周辺でしか見ることができなくなるかもしれない。
また、今回の事業計画には触れられていないが、特急『すずらん』に運用されている785系特急型電車や抵抗制御で残る721系初期車の去就も注目されている。いずれもJR初期に登場した車両であり、翌年度以降の事業計画には老朽置換えの対象に入ってもおかしくない状況と思われる。
