ペット同伴EVドライブ旅行の難しさと「目的地充電」の需要性【テスラ モデルY 買いました 16】

ワンコも快適なモデルY
  • ワンコも快適なモデルY
  • 布タイヤチェーンを装着し冬の箱根をEVドライブ
  • 初めてのドライブに興奮
  • エネチェンジの充電器。この設置充電器は200Vの普通充電器で最速6kW/hで充電できる。
  • 雪道でのドライブ旅行のため2種類のチェーンを用意した。

テスラ『モデルY』が発売されたと同時にとっさにポチッてしまった一編集者である筆者。今回、首都圏から東京近郊へ2泊3日のドライブ旅行を楽しんだそう。しかし、短距離とはいえ、EV旅にまったく不安はなかったのか? それともガソリン車と違い、それなりに不便な旅だったのか? そんなショートトリップ報告をお贈りしよう。

◆因縁の箱根EV旅行

布タイヤチェーンを装着し冬の箱根をEVドライブ布タイヤチェーンを装着し冬の箱根をEVドライブ

以前、昔レンタルした日産『リーフ』を利用した伊豆旅行で電欠の恐怖を味わったと紹介した(第3回 8年前の「電欠恐怖」の記憶を払拭できるのか)。そのときは箱根越えという山越えのルートだったので、上りのときに走行可能距離が極端に短くなり、心臓がバクバクしたのだが、その記憶はいまも脳裏に焼き付いている。

今回、目的地に選んだのは箱根・仙石原だ。箱根湯本経由で行くことにしたので「山登り」となる。すでにテスラに乗っている諸先輩方はなんとも思わないのだろうが、とにもかくにも初テスラ、初モデルYユーザーのボクにとっては、EVにまつわる過去の記憶が拭えない。

ショートトリップとはいえ、入念に充電計画を立てていくことにした。まずはホテル選びだ。今回の旅は、初のEV近距離旅行ということに加えて、ペットも連れて旅行を行う予定だ。だから、当然、ペット同泊可の宿泊先を探す。しかし、同時にEVのことも考えなければならない。そう充電だ。

テスラのサイトで「充電」の項目に書かれているのが「デスティネーションチャージング」。ここには以下のように書かれている。

デスティネーションチャージング
目的地で充電

デスティネーションチャージングは、ホテル、ワイナリー、レストランなど便利な場所に設置されています。デスティネーションチャージング ロケーションには40,000以上のウォールコネクターがあり、数時間の滞在からご宿泊まで対応、充電中はゆっくりと休息できます。

要は、行った先、目的地で駐車しているあいだに充電しよう、ということ。もちろんこれには目的地に充電器が必要なので、充電器がある目的地を選ばなければならない。ガソリン車やハイブリッド車では、そんなことは考えなくても自由に目的地を選択できるので、そのあたり、EVは自由度が小さい。

とはいえ、EVであればデスティネーションチャージングで精神的にも快適になるので、こういう考え方は必須になる。また、急速充電は通常30分間なので、目的地でゆっくりするには中途半端な時間となり逆に不便だ。だからデスティネーションチャージングは基本的に普通充電となる。普通充電であれば、1~2時間の充電ではたかがしれているので、これまた逆に終日時間を潰せるような遊園地やショッピングモールなどでデスティネーションチャージングするほうが都合が良い。

宿泊を伴った旅行であればホテルや旅館で滞在中に充電できることがもっとも効率が良い。最近は充電器が付いている宿も多くなっているので、その点は以前に比べ、多少柔軟に宿を選ぶことができる。が、今回ボクの旅は犬と一緒だ。となると選ばなければいけないのは“EV充電可能+ペット同泊可能”なホテルか旅館ということになる。

初めてのドライブに興奮初めてのドライブに興奮

◆ペット同伴EVドライブ旅行の難しさ

そうなると選べる宿は極端に少なくなる。箱根でも数軒だ。もちろん宿泊日程や予算も限られているので、希望にぴったりなホテルや旅館を探すのは至難のワザとなる。箱根以外も調べてみたが、どこも同じような状態なので、ペット同伴EVドライブ旅行は限られたものになることがよくわかった。

今回、まっさきに確認した“EV充電可能+ペット同泊可能”なホテルは予算と日程が合わなかったので、とりあえずその他にペット同泊可能な宿がないか探す。いくつかあるなかで次にやったことは、それぞれの宿の周りのEV充電器がある場所を探すことだ。

そして某宿泊施設の徒歩圏内にある普通充電器を発見した。ボクが探し当てたのは最近設置数を増やしている“ENECHANGE(エネチェンジ)”という企業の充電器。ここの設置充電器は200Vの普通充電器で最速6kW/hで充電できるものだ。時間当たりの単価は場所によって異なるがそこでは55円/10分となっていた。

ただし、これは6kW/h充電の場合。最近話題の軽EVなど3kW/hでしか充電できない軽EVの場合、充電量は半分になる。普通の充電器では充電量が半分になっても時間当たりの料金は同じだ。ところがこの充電器の秀逸なところは、充電量が半分になれば料金も半額になることだ。実はこの機能を利用してモデルYの充電設定を3kW/h充電の設定にすれば、料金を半額にして、ゆっくりと充電することができる。

なぜそんなことをするのか? この充電器、宿から徒歩圏内とはいえ、宿から4~5分は離れている。となるとあまり早く満充電になるのも都合が悪い。夜中に充電が終わって引き取りに行くのは面倒だから、ちょうど良い具合に朝まで一晩かけてゆっくりと充電したかったのだ。

エネチェンジの充電器。この設置充電器は200Vの普通充電器で最速6kW/hで充電できる。エネチェンジの充電器。この設置充電器は200Vの普通充電器で最速6kW/hで充電できる。

◆翌朝は精神的負担ゼロ!

翌朝、テスラアプリでは1時間ほど前に充電が完了したことを示していた。ボクは車内を暖めようとプレコンディショニング機能をテスラアプリから設定。しかしこれでどうやらモデルYがスリープから目覚めたらしく、止まっていた充電が始まってしまった。予想外の挙動ではあったが、課金は10分ごとなので、プレコンディショニングが終わったころにモデルYを引き取りに行った。

ワンコも快適なモデルYワンコも快適なモデルY

朝、満充電で観光に出発できるということだけで満たされた気分になる。これはEV以外のクルマでは味わえない感覚だ。EVに乗っていなければ普通そんな心配はまったく必要ない。それはわかってはいるのだが、EVドライバーはそういう意味では価値観が異なっているのだろう。ボクの価値観もEVをもつことによって変わっていったのか。そこでようやくEV派と非EV派の論争に結論がでない理由がわかった。“価値観の違い”は結婚していれば十分に離婚の理由になるほどだ。だからこそ結論はでない。

ところで、2月の箱根路は日によっては、まだまだ積雪があるので気を抜けない。ボクのモデルYは、この冬、寒い地方に行く予定もなかったので、タイヤはノーマルのままだ。そんな状態で、雪でスタックしたなんてことになれば避難は免れないし、かっこうのニュースネタになる。とくにテスラならなおさらだ。

そこで前もってテスラのWebサイトから通常のタイヤチェーンを購入し、念のため近年販売されている装着が簡単な「布タイヤチェーン」も別に準備した。そして旅行の数日前には、両方とも装着テストをしておいた。

案の定、朝早くの箱根路は路面凍結のおそれもあり、また、ときおり雪も降るという天気だ。数日前に降った雪で、道路にはまだ積雪も残っている。金属のタイヤチェーンを装着するほど積雪した道路を走るわけではないので、布タイヤチェーンを装着する。

布タイヤチェーンの威力は通販サイトの口コミで知ってはいたが、実際に装着してみるとその効果はそれなりにあるようで、まだ雪が残っている道路でも安心して走ることができる。まぁ、これはモデルYに限った話ではないので詳細は省くことにするが…。

雪道でのドライブ旅行のため2種類のチェーンを用意した。雪道でのドライブ旅行のため2種類のチェーンを用意した。

結局、以前とは違い、EV環境が充実していたこともあって、「山登り」もなんなくこなし、経路充電せずに電欠の不安もなく2泊3日のペット同伴旅行は無事に終了した。これは今回の旅が短期間であり首都圏から100km弱の場所だったのも大きいのだが、なんといってもディスティネーションチャージングのおかげだろう。

今回、ディスティネーションチャージングがなければまったく違ったEV旅行になったと思う。それほどにEVでの旅行は充電がポイントになるし、充電状況如何では致命的な実害がでることも考えられる。まだまだ気軽にドライブ旅行できるEV環境ではなく、EVでの旅行には事前の充電計画と現地の充電環境がどれほど大切かがわかった経験だった。

《田代真人》

田代真人

田代真人 福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にて初代Webマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て独立。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動後、現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「編集論」。

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