日産自動車の最高執行責任者 アシュワニ・グプタ氏が2月27日、最新のビジネス戦略について記者会見を行った。
■電動化戦略は中国以外上方修正
発表は電動化戦略の強化・加速、そしてSDVに向けたソフトウェア技術の強化の2つが柱となった。各国での電動化(EVおよびe-POWER)率については、中国以外2026年時点での予測値を上方修正している。以前の予想では、2026年グローバルで電動化比率は40%だった。これを44%になる見通しとした。2030年には23車種の電動車をそろえる計画だったものを、EVを4車種増やし27とした。
2026年の電動車比率の予測をリージョン別でみると、EUで78%から98%、日本は55%から58%、アメリカは40%予想を40%以上にそれぞれ変更している。中国は、Euro7に相当するChina7が延期になったことを受けて、40%だった予想を35%に下方修正している。アメリカについてはバイデン政権の電動化シフトが鮮明になってきているものの、IRA(インフレ抑制法)による影響が読みにくいため大幅な変更は行わなかった。
技術革新での発表は、バッテリー、パワートレイン、プラットフォームへの取り組みをアップデートした。バッテリーについては、原材料の高騰リスクはあるもののコスト削減に引き続き注力する。2028年に全固体電池の市場投入を改めて表明し、計画に変更がないとした。パワートレインは、『リーフ』や『アリア』のBEVプラットフォームとe-POWERプラットフォームの統合化を進める。動力モーター、インバーター、ギアボックスを一体化したe-Axleを共通化する。
車両モデル数も絞り込む。以前はプラットフォーム、サスペンション、バッテリーといった3つのカテゴリごとに各2つのバリエーションを用意し、合計16のモデルバリエーションを考えていた。EU、中国、アメリカといったリージョンごとの市場ニーズに合わせて、まずプラットフォームをC、Dセグメントのミドルサイズに絞る。バッテリーはミドルとハイの2つをリージョンごとに1つとする。サスペンションのグレードもプレミアムのみとする。つまり、EU、中国、アメリカというリージョンごとのプラットフォームを3つに絞り込み電動車の車種展開をする。
なおBセグメントについては、ルノーとの提携を生かす。同社のプラットフォームを活用し欧州で『マイクラEV』を展開する予定だ。

■オンデマンドでアプリや機能をインストールするSDVを目指す
SDVへの対応は2022年までにフェーズ1を終えたとする。フェーズ1ではOTA対応を進め、ソフトウェア更新・地図更新の体制を整えた。顧客IDはNissanConnectに集約している。
2023年からのフェーズ2は、NissanConnectのコンテンツを広げる。ワイヤレスアンドロイドオートやインテリジェントルートプランナーが例として示された。25年からはフェーズ3としてここでは自動運転支援技術といった車両機能のアップデートやGoogle Automotive Serviceとの連携が予定されている。フェーズ3の特徴はコンテンツの拡充だけでなく、オンデマンドでソフトウェアの購入やインストールができることだ。
日産は「カーウィングス」の時代に、サービスプラットフォームをオープン化したことがある。サードパーティにカーウィングスを開放し好きなアプリやサービスを展開してもらう取り組みだ。非常に野心的な取り組みだったが、技術や世間がついてこれず普及には至らなかった。いまならアプリやコンテンツのマーケットプレイスは当たり前で、テスラがこれに近いアプリエコシステムを実現している。
発表では詳細は語られなかったが、共通化、共用化が進むプラットフォームを活用して、車種やモデルごとのアプリや車両機能、安全運転支援機能などをアドオン感覚で追加できる未来を示唆するものだ。アプリやコンテンツは純正とは限らない。サードパーティのアプリはエンタメからフリート管理など業務システムまで可能だ。日産が進めるV2XやVPPといったエネルギーエコシステムにも適用可能だ。SDVは単に台車のガワを用途別に取り換えることではない。車両のサービスプラットフォーム化は、SDVとして欠かせない機能といえるだろう。