近年の傾向どおりパリモーターショーも、国外自動車メーカーやサプライヤーの出展が減っている。ただし、母国がフランスのヴァレオは大きなブースで次世代技術をメインに展示を行っていた。
同社のはからいで現地のGCEMO(Group Chief Engineering & Marketing Officer)であるミシェル・フォリシエ氏に話を聞くことができた。その内容をベースに、同社が取り組む新技術や今後の戦略を考えたい。
オルターネーターの既存技術を活かし、電動車向け技術開発を加速

ヴァレオが展示していたのは、eアクスルを中心とした車両プラットフォーム関連のモジュール、2026年にはEUで法制化されるドライバーモニタリングシステム、そして次世代型のEESM(巻線界磁型同期モーター)、同社の第3世代となるLiDAR「SCALA3」だ。
EESMは、誘導型モーターの一種だが、回生ブレーキ効果も利用できるモーターだ。モーターのローター(回転軸)、ステーター(固定子)ともに巻線(コイル)を利用するので、誘導型モーターの欠点である高速走行時に逆起電力を制御できる。初期のEVやハイブリッド車は回生エネルギーを利用しやすく、ローターに永久磁石を利用する永久磁石型モーターを採用する例が多かった。しかし、現在ではルノー、日産のほかにもEESMを使うメーカーが増えている。同社は新しいEESMについてルノーグループとの協業を発表している。『ゾエ』や『アリア』(日産)にEESMモーターが採用されている。
そのためヴァレオでは、オルターネーターの既存技術を活かしながら、知見の少ない大型駆動用モーターについてはパートナーシップ戦略で対応する。その上で、電動車向けのモーター技術、およびモーターをベースとしたモジュラー開発、eアクスルに注力していく考えだ。
2つの電動モーター戦略で自動車以外にも幅広い製品に対応
ヴァレオがEESMに注目した理由について、フォリシエ氏は「永久磁石にはレアアースが必要だからだ。ネオジムなどレアアース資源のほとんどは中国に依存しなければならない。地政学的な問題や安価な採掘による環境破壊問題もある。EESMはゼロレアアースモーターを実現可能だ」と語る。地政学リスク、環境問題はどの企業も避けて通れない。すべての自動車メーカー、すべての産業に当てはまる。そして、希少資源回避は単純にコスト面でも合理性がある。