【IFA 2022】エネルギー危機の欧州で開催…国際コンシューマ・エレクトロニクス展

IFA 2022 会場のメッセベルリン
  • IFA 2022 会場のメッセベルリン
  • パナソニックのセントラルヒーティング対応ヒートポンプ冷暖房システム
  • LGのLEDプランター。LGのほかボッシュなどの製品もあり
  • ヴィンファーストブース
  • イスラエルのEモビリティ企業City Transformer
  • スイスのキックボードメーカー「SoFlow」

欧州最大規模のグローバルエレクトロニクス展「IFA 2022」(国際コンシューマ・エレクトロニクス展)が、パンデミック期間を経て、9月2~6日に、ドイツのメッセ・ベルリンで3年ぶりにリアル開催された。

世界の一部地域ではいまだ新型コロナウイルス感染症の影響が残るものの、出展社数は1100社以上、来場者数は5日間の会期で16万1000人以上にのぼった。

◆エネルギー危機下で何を訴えるのか

今回のIFAでは、迫るエネルギー危機に対する各社の提案が注目された。

ロシアのウクライナ侵攻以来、欧州全土、特にドイツでは天然ガス(CNG)不足によるエネルギー危機が深刻な社会課題となっている。ロシアからドイツに向かう天然ガスパイプラインの流量が大きく絞られているためだ。

日本で天然ガスと言えば発電用途を連想するが、ドイツでは発電と共に、冬季の暖房用の燃料として広く使われている。例年は夏の間に天然ガスを備蓄し、冬季にボイラーの燃料として天然ガスを消費しているのだが、今年はその備蓄が計画通りに進んでいない。欧州の冬は厳しく、天然ガスの不足は、市民の死活問題につながる恐れがある。

ゆえに今回開催されたIFAでは、今年の冬に向けた省エネルギーへの取り組みや、ガス暖房に代わる電力暖房ソリューションの提案が期待された。

◆ヒートポンプエアコンが持つ意味

ガス暖房から電力暖房へ。ガスを利用せず、CO2を排出しない電力暖房=ヒートポンプエアコンで、アジアの各社が存在感を示した。

日本を含むアジア各国ではヒートポンプエアコンが普及している。暑い夏を過ごすには冷房が必要であり、それにヒートポンプを使うからだ。一方欧州各国では、ヒートポンプはほとんど普及していない。夏でも冷房が要らない涼しい気候であり(近年は異常気象により猛暑に見舞われる地域もあるが)、かつ冬季の暖房は、ガスボイラーによるセントラルヒーティングが古くから普及しているためだ。

しかし冬にガスが使えない(≒ガス料金が高騰している)状況下で、ヒートポンプエアコンを製造するメーカーは欧州への売り込みに熱心だ。IFAでも、ヒートポンプエアコン大手のパナソニックが、セントラルヒーティングに対応したヒートポンプエアコンシステムを出展した。

ボイラーの代わりに大型のヒートポンプを設置すれば、各室に設置された既存のヒートパネルを利用した暖房が可能。それだけでなく、冷房の吹き出し口を追加すれば室内を冷やすこともできる。欧州でも高まりつつある冷房のニーズに応えるものだ。

パナソニックのセントラルヒーティング対応ヒートポンプ冷暖房システムパナソニックのセントラルヒーティング対応ヒートポンプ冷暖房システム

サムスンも同様に、ヒートポンプ冷暖房システムを出展した。同社が提案するオール電化住宅のソリューションの一部として、蓄電池やソーラーパネルと組み合わせ、カーボンニュートラルにも貢献するという提案だ。

◆欧州のライフスタイルを示す提案

もちろん、IFAの出展はエネルギー関連だけではない。欧州ならではの様々なライフスタイル提案が今年も見られた。

欧州の展示会においては、技術そのものではなく、技術がライフスタイルにどのように貢献するか。この点が何よりも重視される。その象徴的な展示が、卓上のハーブプランターだ。

プログラムされたLEDの照射により、ハーブの生育を3-4倍早めるという技術を活用しながら、新鮮なハーブを食卓で摘んで、その場でフレッシュな香りをいただく、というもの。技術がライフスタイルに貢献する好例と言えるだろう。

LGのLEDプランター。LGのほかボッシュなどの製品もありLGのLEDプランター。LGのほかボッシュなどの製品もあり

◆ベトナムのEVベンチャーが欧州進出

自動車関連としては、ベトナムのEVベンチャー「ヴィンファースト」が唯一本格的なブースを出展した。同社は欧州において50カ所の販売店網を整備し、本格参入することを表明しているが、今回はミドルサイズSUV『VF8』と『VF9』の実車を展示した。VF8に関しては実際に座ることもできたが、インテリアの造作や素材の質感は上々。EVの販売シェアが2割に届こうとするEU市場に対してアピールした。

ヴィンファーストブースヴィンファーストブース

また特設イベント「SHIFT MOBILITY」も開催された。欧州各国で普及している電動キックボードや、電動アシスト自転車、マイクロEモビリティなどのメーカーが特設ブースを出展し、安全性向上への取り組みなどを紹介した。

■IFA2022 現地の様子を詳細にまとめた調査レポートについてはこちら
《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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