【日産 サクラ 買いました 3】充電ケーブルは別売?タイヤの減りは早い?EV時代のオプション&メンテナンス

ガソリン車とは違うEVならではのオプションやメンテナンスを考える。写真は左がサクラ、右がガソリン車のデイズ
  • ガソリン車とは違うEVならではのオプションやメンテナンスを考える。写真は左がサクラ、右がガソリン車のデイズ
  • 日産 サクラ
  • EVはトルクが大きいため、タイヤの摩耗も比較的早いという
  • EVはエンジンオイルの交換は不要だが…
  • バッテリーは4本のクロスメンバーで補強されている
  • サクラの急速充電性能は期待できそう
  • サクラのコックピット
  • 日産 サクラ

実際に日産『サクラ』の購入を決めた筆者によるレポートの第3回。短期連載の最後は、EVならではのオプションや装備品、メンテナンスの考え方をまとめたい。今後EVが普通に選択肢に入ってくるとき、自動車として従来から変わらない部分とそうでない部分が必ず出てくるだろう。

すでに高額になりがちなEVは残価設定ローンや個人リースで購入する層がでている。完全なサブスクリプション(解約が月単位で自由で月額の変動や解約金などが発生しない)を望む声もある。オンライン販売との親和性も高く、ディーラーや整備工場の位置付けも変わってきている。EV時代ならではの車の買い方について考えたい。

日産 サクラ日産 サクラ

オプション装備よりも自宅の充電環境整備を

オプションの前にまず検討すべきは自宅の充電環境だ。集合住宅や契約駐車場の関係で設置が難しい場合もあるだろうが、AC200V・3kW程度の普通充電コンセントの設置はほしいところ。戸建て住宅であれば、この工事はそれほど大変ではない。予算的には数万円から10万円もあればほとんどの状況で設置可能だ。国内の家庭用コンセントはAC100Vだが、電柱からの配線は単相交流・3線となっているので200Vのコンセントは家庭内の配電盤以降の工事で増設できる。すでに大型冷蔵庫やエアコンのために200Vのコンセントを設置している住宅も少なくない。

EVの充電というと高速道路などでの急速充電器をイメージしがちだが、いまだに家庭用AC充電器に大がかりな工事は必要ない。9kW、12kWなど輸入車向けのAC充電器はコンセント部分の本体が10万円以上するものもあるが、3kWのコンセントの部品代は数千円から入手できる。

平場の契約駐車場やマンション駐車場、立体駐車場でも充電コンセント設置を請け負ってくれる業者も増えている。管理組合や大家などとの調整もやってくれる業者もいる。戸建てではないからとEVを諦める理由はなくなりつつある。

リーフには普通充電用のケーブルが付いている。EVで重要なのは普通充電だリーフには普通充電用のケーブルが付いている。EVで重要なのは普通充電だ

EVにおいてなにより必要なのは「普通充電ケーブル」だ。『リーフ』など平均的なEVは車両に普通充電ケーブルが付属するが、サクラは別売りのオプションとなっている。サクラのようなEVこそ普通充電があれば外での急速充電はあまり必要ではない。サクラこそ普通充電ケーブルを付属させるべきだが、別売なのは残念だ。サクラを注文するなら、必ず普通充電ケーブルをオプションでつけたい。

なお、オプションケーブルには100Vと200Vの2種類がある。家に200Vのコンセントを設置しないなら100Vを選ぶ。100Vのケーブルがあれば(プラグの形状が違う)緊急時に出先で一般のコンセントから充電させてもらうことも可能になる。最悪車庫に充電器を設置できずディーラーなどのDC急速充電器だけで対応する場合(70kWh前後のバッテリー容量があり、航続距離が300kmくらいあればDC急速充電だけでまかなう人もいる)でも同様だ。

耐摩耗性・静粛性:タイヤはこだわるべし

EVはトルクが大きいため、タイヤの摩耗も比較的早いというEVはトルクが大きいため、タイヤの摩耗も比較的早いという

タイヤもEVならではの注意ポイントがある。最近はEVを意識したタイヤが出始めているが、転がり抵抗と耐久性、そして静音性にはこだわりたい。転がり抵抗は航続距離や電費のためだ。BMW『i3』は省エネのため大径で幅の狭い特殊タイヤを純正採用しているくらいだ。通常はメーカー純正で問題ないが、自分でタイヤを変えるときは考慮しておくべきポイントだ。

耐久性は、EVのトルク特性によるものだ。サスペンションがアクティブ制御されていたテスラ『モデルS』は、タイヤの片減りが起きやすかった。スタートから最大トルクを発するEVにおいてタイヤの耐摩耗性は侮れない。サクラは軽自動車の規制で47kWしかないのにトルクは195Nm(2リッタースポーツカークラスのトルク)もある。これが乗りやすさに直結しているのだが、タイヤへの負担も考慮したい。

転がり抵抗と耐摩耗性は、通常運用なら純正タイヤで問題になることはない。だが、静音性は少し異なる。音については個人の好みもあるので、一概に純正がよいとは言い切れない。エンジンがないEVは軽でも車内が静かなのが特徴だ。軽自動車にありがちな高速道路や坂道で音だけうるさくて前に進まない、といったストレスから解放される。が、それだけロードノイズや風切り音がよく聞こえるともいえる。メーカーもロードノイズ対策、遮音対策はガソリン車以上に行っているが、静粛性の高いタイヤは高速道路などのツーリングのストレスをかなり減らしてくれる。

タイヤ内に吸音スポンジが入ったタイヤはEVにはお勧めである。

EVオーナーにとって空気入れとエアゲージは必需品

EVはエンジンオイルの交換は不要だが…EVはエンジンオイルの交換は不要だが…

EVはエンジン・トランスミッションがないということで、メンテナンスもローコストだといわれている。間違いではないが、メンテナンスが不要というわけではない。エンジンオイルのように頻繁に交換する油脂類はないが、ブレーキフルードの交換は発生する。一部の変速機がついたEVはギアのメンテナンスが必要だ。ラジエターはないが、バッテリーやインバーターなどを冷却するために冷媒(エアコン)や液冷システムを採用している車種がある。これらのメンテナンスも発生する。

ブレーキパッドは、回生ブレーキのため減りが遅いという特徴もある。パッド、ディスクの交換頻度はガソリン車より低くなるだろう。多くのEVが搭載する補器類用の12Vバッテリーも交換頻度は下がる。イグニッションやエアコンの電源としては使わない。走行中はEV走行用のバッテリーから降圧して12Vバッテリーの充電も行っているので、バッテリー上がりの心配もほとんどない。

タイヤについては前述どおりだが、忘れがちなポイントは、EVはガソリンスタンドにいくことはほとんどない。つまりガソリン車ならスタンドで済ませていたことを自分、もしくはディーラーに頼むことになる。ここで問題になるのはタイヤの空気圧チェックだ。給油せずエアチェックと空気入れだけ使わせてもらうのは若干気が引ける。

日産 サクラ日産 サクラ

じつは多くのEVオーナーにとって空気入れとエアゲージは必需品といってよい。これも大がかりなものは必要なく、量販店で売っているようなシガーソケットから電源をとるコンプレッサーかバッテリー式のコンプレッサーがあればよい。エアの調整だけなら手押しの自転車用の空気入れでも十分だ。海外ではTPMS(バルブやリムなどに取り付ける小さいセンサーで4輪の空気圧を常時監視できるシステム)の義務化が進んでいる。EV時代には、これも標準装備になっていくかもしれない。

スタンドに行かなくなることに関連して、タイヤローテーションや冬タイヤへの交換も自分でやる(DIY)EVオーナーが増えている。この場合、トルクレンチは必須である。普通のクロスレンチで十分と考えがちであるが、EVのトルクは尋常ではないので、同クラスのガソリン車より規定トルクは高い。しっかり締め付けトルクを管理するためにもトルクレンチが必要だ(もしくはいっさいをディーラーや整備工場にまかせること)。

タイヤ交換を自分でやる場合、床面にバッテリーモジュールが配置されるEVはジャッキアップポイントも注意が必要だ。マニュアルに記載に従えばよいのだが、車種によってはジャッキアップポイントに専用のマウントやパッドが必要な場合がある。

乗り続けるならコネクテッド+OTAが肝となる

EV時代にはOTAによるナビや性能のアップデートも視野に入れたクルマ選びをしたいEV時代にはOTAによるナビや性能のアップデートも視野に入れたクルマ選びをしたい

最後のポイントはコネクテッド機能だ。テスラのようなアプリ連携や各種コネクテッド機能はなくても、バッテリー消費と充電スポットと連動したナビ機能はあると便利だ。充電スポットや駐車場情報が得られるアプリやサードパーティサービスがあるので、これらを利用してもよいが、車載のナビで設定したルートに最適な充電スポットを提案してくれるのは助かる。

ナビ以外では、OTA(Over the Air)機能もこだわるべきだ。ECUの制御しだいで出力特性も電費も変更でき、不具合やリコール対応もOTA=無線通信によるアップデートでできることがEVや今後のクルマにとって必須機能といえる。いまはまだ限定的なサービスだが中長期では、クルマはPCのようにOTA前提で売られるようになるとすれば、コネクテッド機能の拡張性や将来性は、新車購入で忘れてはならない。OTAは同じ車両でも長く使い勝手を損なわないようにしてくれる。長期で乗ることを考えているなら無視しないほうがいい。

国産でECUプログラムまでOTAでアップデートしている車種は、いまのところない。だが、トヨタ、日産など主だったメーカーは、新しいプラットフォームからOTAが可能なアーキテクチャを採用し始めている。車検制度のデジタル化とともに、将来的には日本でも車両のソフトウェアアップデートが一般化する可能性がある。逆に、オンラインでのアップデートに対応しなければグローバルでの競争力維持は困難になるだろう。

《中尾真二》

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