国土交通省はこのほど、7月28日に開催された「今後の鉄道物流のあり方に関する検討会」における中間とりまとめを公表した。
鉄道物流の基幹的な役割を担うJR貨物では、輸送量が2013年度以降、横ばい状態で、2018年以降は減少傾向に。トラックなど他の輸送手段との比較でも、その分担率は5%前後で推移している。このような流れでJR貨物では鉄道事業の赤字が続いており、国鉄長期債務等処理法に基づく支援が2030年度まで講じられるなど、経営基盤の脆弱さが解消されていない。
一方で、鉄道貨物は二酸化炭素(CO2)排出量がトラックの13分の1であることから、2050年に向けた実現が目指されているカーボンニュートラルに貢献することができるほか、平時における内陸部へのエネルギー輸送や、災害時・有事における物資輸送で公的なインフラとして機能することが期待されている。また、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働規制が始まるとドライバー不足も懸念され、大量輸送か可能な鉄道貨物はそれを補う重要な手段になるとも言われている。
この検討会ではそうした鉄道貨物を取り巻くさまざまな状況や変化を鑑み、今後の取組みについての方向性を整理するべく2022年3月から開かれており、5回目となる今回の会合では中間取りまとめとして「貨物鉄道の輸送モードとしての競争力強化に向けた課題」「貨物鉄道と他モードの連携に向けた課題」「社会・荷主の意識改革に向けた課題」という3つの課題ごとに方向性が示された。
このうち「貨物鉄道の輸送モードとしての競争力強化に向けた課題」では「新幹線による貨物輸送の拡大に向けた検討の具体化」が挙げられており、国と旅客を含めたJR各社が検討に着手する必要があるとしている。
ちなみに、新幹線の貨物輸送構想は、1964年10月に開業した東海道新幹線にもあった。1957年に打ち出されたこの構想は1961~1963年に具体案を策定。東京~大阪間を最高速度130km/hで5時間30分で結び、貨物駅を東京・静岡・名古屋・大阪の各地区に限定。運行は夜間で、線路保守を考慮して週1回運休するという方針が立てられていた。

輸送方式は、現在、東京~大阪間で運行されているJR貨物のM250系貨物電車「スーパーレールカーゴ」と似たようなコンテナ輸送方式やトラックのトレーラーを載せるピギーバック方式などが想定され、t単位の貨物重量に輸送距離を乗じた輸送トンキロは、1975年度には、2015年度におけるJR貨物の輸送トンキロの4分の1に相当する50億トンキロになると見込まれていた。

ところが、この計画は東海道新幹線建設の予算超過や、在来線と直通できない新幹線貨物に国鉄が採算面で難色を示したことなどから実現せず、新幹線は一貫して旅客のみを輸送して今日に至っている。
これとは別に、2008年には暫定4車線で計画・建設中の新東名高速道路や新名神高速道路の中央分離帯を活用した東京~大阪間の鉄道貨物輸送が「東海道物流新幹線構想」として検討されたことがある。第三軌条方式の貨物専用鉄軌道を敷設し、無人の自動運転によるコンテナ積載列車を平均速度90~100km/hで6時間30分程度で結ぼうというものだった。
「新幹線」とあるものの「物流専用鉄軌道」という位置づけで、既存の新幹線を利用する構想とはまったく異なるものだったが、整備が6車線化へ流れていく過程で立ち消えとなっている。