将来的な成長が見込まれている電気自動車(EV)をハブとして、自動車業界への異業種参入が活発化している。部品点数が少なく、構造がシンプルなEVは参入障壁が低いため、その活用法を含めて幅広い業界が注目する分野だ。
こうした動きを業界のトレンドとしていち早く捉え、「EVトランスフォーメーション(EVX)」という言葉を提唱しているリブ・コンサルティング。今回はクロスモビリティ事業部の責任者でモビリティインダストリーグループ ディレクターである西口恒一郎氏に話を聞いた。
ビジネスモデルを生み出すだけではない、事業収益を生み出す仕組みが必要
---:まず、御社のモビリティ領域における取り組みについてご紹介ください。
西口恒一郎氏(以下敬称略):モビリティインダストリーグループという部署があり、その下に2つの事業部があります。ひとつがカーディーラーコンサルティングの事業部で、内容としては、新車のディーラーや自動車販売店を対象とした経営コンサルティングになります。
そしてもうひとつが、私が責任者を務めているクロスモビリティの事業部です。クロスモビリティ事業部は今年立ち上げたばかりの部署で、大手企業やベンチャー企業に対する事業開発のコンサルティングを手掛けています。モビリティ関連の新しいプロダクトやサービスを創り、育て、広げていくためのサポートをしています。具体的には、市場調査やリサーチの段階から始まり、サービスの開発・実証実験を経て、サービスを広げていくところまで行なっています。最近では、新規事業のアライアンス先のご紹介や協業の構築、M&Aのご依頼をいただくことも増えています。
そのような中で、現在総合商社の丸紅と進めているプロジェクトを例に挙げますと、MaaSアプリを作っているイスラエルのベンチャー企業で、インテルグループ傘下の「Moovit(ムーヴィット)」という会社があるのですが、このMoovitの日本国内での展開戦略プランの策定を一緒に進めています。現在は実証実験の段階で、第一弾として北日本のエリアで実証実験の準備をしています。早ければ今年9月、遅くとも10月には実証実験を開始する予定です。
実際に新たなモビリティサービスを始めるとなると、地域の行政や自治体だけでなく、競合として警戒されそうな地域の交通事業者、タクシーやバス会社とうまく折り合いをつけるなどの地道な仕事が必要ですが、こういった汗をかく仕事も当社がサポートしています。ビジネスモデルの構築だけにとどまらず、実際にそれを社会に実装していくまで見届けることが重要だと考えております。
EVXは親和性の高いエネルギー業界から始まった

---:EVトランスフォーメーション(EVX)の現状は
西口:もともとEVXという言葉は当社が言い始めた言葉ですが、これは、モビリティ業界のプレイヤーからエネルギー関連事業の相談を受けること、逆にエネルギー関連企業からモビリティサービスについての相談を受けることが増えてきており、いずれもその構想のハブになっているのがEVだったのがきっかけです。カーボンニュートラルの流れの中で、EVを広げていくにあたってどのようにエネルギーと連携すればいいか、また連携していくことによって新たな領域に事業を拡大することはできないか、というニーズが生まれました。
そのような状況で、新たなEモビリティ企業や、海外のEV・モビリティメーカーが日本に参入する事例が増えてきており、そういったモビリティを活用すればモビリティの領域に踏みこめるんだということがわかってきました。去年からほぼすべての系統電力の会社が、EVを利用してカーシェア事業を手掛けています。北海道電力も今年からテスラを使ったEVカーシェアリングとV2Hの事業を新しく始めていますね。
今までは、電力を作って売るという事業をしていた彼らが、新しくモビリティサービスを始めて事業拡大していこうとしており、そのハブになっているのがEVだということです。モビリティ業界とエネルギー業界が相互に乗り入れをしており、そしてその間にEVがいる。そこで生まれる事業領域のことをEVX=EVトランスフォーメーションと定義して去年の10月に発信しました。