ブラバスの「パワー」に惹かれる…電動化でどうなる?

ブラバス900、ベース:メルセデスマイバッハS650L
  • ブラバス900、ベース:メルセデスマイバッハS650L
  • ブラバス900、ベース:メルセデスマイバッハS650L
  • ブラバス900、ベース:メルセデスAMG E63S
  • ブラバス900、ベース:メルセデスAMG E63S
  • ブラバス900、ベース:メルセデスAMG E63S
  • ブラバス・スマート92R、ベース:スマート・フォーツー
  • ブラバス1300R、ベース:KTM
  • ブラバス800、ベース:メルセデスマイバッハGLS600

メルセデスベンツの高性能モデルといえば、現在はカタログモデルとして販売されている「AMG」が有名だが、実はもうひとつ有力なブランドが存在する。AMGと同様、ドイツで自動車メーカー認証を受けているファクトリー、BRABUS(ブラバス)である。

日本においてはバブル時代、ほんの一瞬輝きを放ったことがあるものの、メルセデスベンツ日本が輸入を手掛けていないこともあって現在販売台数は少数、知名度も高くない。が、本国ドイツではメルセデスベンツ車にドリームカーのような性能を付与するファクトリーとして認知されている。

チューニングベースは下は小型BEV(バッテリー式電気自動車)のスマート『EQフォーツー』から上はプレステージクラスのメルセデスマイバッハ『S650L』までさまざま。かつてはチューニングモデルという位置づけだったAMGブランドモデルもカスタマイズの対象で、さらにプラスアルファの高性能を追求している。上記のマイバッハS650Lは最高出力662kW(900ps)、最大トルク1500Nm(153kgm)に達する。また子会社を通じてメルセデスベンツ以外のチューニングも幅広く展開しており、今年(2022年)にはKTM製のスーパーバイクを軽量カスタマイズしたモデルも発表している。

メルセデスベンツの根拠地、シュトゥットガルトから400km以上離れたボットロプでブラバスが発足したのは1977年。父親がメルセデスベンツの販売会社を営んでいたボード・ブッシュマンが友人のクラウス・ブラックマンと共同で創業した。社名はブラックマンとブッシュマンそれぞれの名の頭3文字をくっつけたものだ。

AMGがレースと深いかかわりを持っていたのとは対照的に、ブラバスは当初から一貫して富裕層の顧客を対象とした超高性能車づくりを志向してきた。とりわけ人気を博していたのはメルセデスベンツSクラスのコンプリートカーで、80年代にはW126型「Sクラス」をベースに排気量6リットルエンジンを搭載するモデルを発表し、AMGと覇を競った。世界記録へのチャレンジにも熱心で、21世紀初頭にはSクラスの下に位置するEクラスのエンジンベイに6.2リットルV型12気筒エンジンを搭載し、市販セダンモデルの最高速度記録350.2km/hを樹立している。

スマートEQを除くとパワーレンジが550ps~900psという驚異的なパワーの信奉者はまだまだ世界中に少なからず存在しており、世界有数のコンプリートカーブランドという地位を維持している。一方で、高性能車に確実に押し寄せている電動化の波をどう乗り越えていくのか、というビジョンについては不透明な部分も多く、今後のゆくえが注目される。

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

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