脱炭素・再エネでガソリンスタンドはどう変わる? コスモ石油の戦略[インタビュー]

脱炭素・再エネでガソリンスタンドはどう変わる? コスモ石油の戦略[インタビュー]
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過疎地でのSS減少問題に加え、カーボンニュートラル問題、さらに近年はエネルギー安全保障が世界中で現実の問題となっている。CASEのような動きを除いても、変革期の荒波にさらされているのは石油元売りやSS・小売店も同様だ。

エネルギー業界でもさまざまな取り組みが行われているが、コスモ石油マーケティング 次世代事業推進部 地域エネルギーグループ グループ長 吉村卓一氏に、同社の取り組みや脱炭素戦略について聞いた。吉村氏は4月19日開催の無料オンラインセミナー 「GX/EVXメガトレンドと自動運転L4実装に向けて」に登壇し「再エネ×EVを組み合わせたCN施策」をテーマに講演予定だ。インタビューは、当日の内容を踏まえて行われた。

カーボンニュートラルへの4つアプローチ

――さっそくですが、脱炭素やカーボンニュートラルの動きをうけて、コスモ石油としての取り組みについて教えてください。

吉村氏(以下同):日本政府として2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言していますが、同時に2030年までにCO2排出量を46%削減するという目標もあります。

コスモ石油では目標達成のため、「いつ」「だれが」「なにを」「どうやって」という4つのアプローチで考えています。

2030年というとあと8年しかなく、それまでにCO2を半分近く減らすとなると、取り組みは今すぐ始める必要があります。「いつ」というのは今しかありません。

では誰がそれを担うのか。もちろん国民含めて日本社会が全体として取り組まなければならないわけですが、一般家庭がガソリン車をEVにしたり、電力契約をグリーン電力にするのにはとても時間が掛かります。省庁、全国の自治体、大企業が主体となってインフラを整えビジネスを変えていく必要があります。

――なるほど。いつ、だれが、は明確ですね。なにをどうやって、についてはどうでしょうか。

手法としては、CO2の主要排出要因である電気と自動車をどうするかにかかっています。この発生源になんらかの対策を行わない限り2030年46%減、2050年カーボンニュートラルは実現できないでしょう。

また、いま存在しない技術や使えない技術に託すのも時間が足りません。いま使える技術、いまあるアセットを駆使することも重要です。

挑戦は多いですが、これだけ大きな問題に取り組むわけですから、目標は脱炭素だけではなく、地域が抱える問題も同時に解決できるような取り組みにしたいと思っています。たとえば、EVの公用車を休日にシェアリングとして解放したり、地域交通に活用したり。

ガソリンスタンドではグリーン売電とシェアリングに取り組む

――たしかに身近な課題解決につながれば、より自分事として取り組めますね。具体的な取り組みは他になにがありますか。

コスモグループには、コスモエネルギーホールディングスという持ち株会社の下に、原油開発を担うコスモエネルギー開発という事業会社、国内の製油所でガソリンや軽油、ナフサなどの石油製品に精製するコスモ石油という事業会社、精製した製品を販売するコスモ石油マーケティングという事業会社、これら石油事業とは別に風力発電事業を行うコスモエコパワーという事業会社など、多くのグループ会社があります。コスモ石油マーケティングはこのうち石油製品の販売、カーリース事業などを手掛けています。

また、石油事業とは別になりますが、コスモ石油マーケティングは、コスモエコパワーの電力も販売しています。

みなさんが「コスモ石油」として目にしたり接したりするのは、コスモ石油マーケティングの事業、主にSSを通じてのサービスになるかと思います。約1000か所のSSでカーリースを行っていますが、近年はEVの契約も増えてきました。

一般的に、EVは初期投資(車両単価)がガソリン車よりかかりますが、昨年度からは補助金が手厚くなった為かない身近になりました。また、ガソリン代よりも電気代の方が低く抑えられる為ランニングコストの低減にも寄与します。個人は勿論事業者にとっても、リースで導入すれば、初期投資を押さえつつ事業コストを下げられます。車両を何台も持つ事業所ではこの差は大きいと考えます。

ガソリンから電気という取り組み

――SSが燃料以外に電気を扱うということですね。電力の小売についてもう少し詳しく教えてください。

電力メニューは、一般的な電気に加え、風力由来のグリーン電力があります。個人・事業者ともにグリーン電力の契約が可能です。グリーン電力はSDGsやESG投資にからんで多くの企業などで導入が進んでいます。

SSも変革期にきている

――SSとしてもガソリン以外の事業を考える時期に来ているのでしょうか。

ビジネスモデルが確立されたガソリンを売ったほうが楽です。しかし、それで世界の潮流に抗っても生き残りは難しいと思います。

化石燃料に固執するより、再エネや新しいエネルギー事業を積極的に取り入れビジネスチャンスにしていく必要があると思います。

――再エネはベースロード電力になりにくい問題がありますが、エネルギー安全保障という視点では、国内で生成できる風力や太陽光発電はリスクヘッジになりますからね。本日はありがとうございました。

吉村氏が登壇する無料オンラインセミナー 「GX/EVXメガトレンドと自動運転L4実装に向けて」は4月19日開催。
《中尾真二》

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