“ちょっと旧いメルセデス” に乗り続けたいなら…ヤング・クラシック リフレッシュプログラム

コロナ禍の日々に気持ちがトーンダウンすることがあっても、街中や駐車場などで、趣がある旧いクルマを目にするだけで「おっ!? あれは!」と、ワクワクした気持ちが湧き上がってくるクルマ好きは、一定数いると思う。

そういった無類のクルマ好きにぜひ伝えたい情報がある。通称「小ベンツ」こと、190クラス(W201型)をはじめとする “ちょっと旧いメルセデス” を対象としたリフレッシュプログラムを、輸入車インポーターであるメルセデス・ベンツ日本が、2016年1月から粛々と展開しているのだ。

同サービスは『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』と名付けられ、メルセデス・ベンツ日本の公式Webサイト内に紹介ページが公開されているのだが、その事実を知らない人は意外と多いかも知れない。

メルセデス・ベンツ日本公式サイト内「ヤング・クラシック リフレッシュプログラム」紹介ページ

愛車を大切にするオーナーに役立つ情報を届けるべく、国内自動車メーカー、輸入車インポーター各社が取り組む旧車関連プロジェクトの詳細を取材し続けている当編集部は『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』の全貌を知るべく、メルセデス・ベンツ日本株式会社の企業広報課に取材を依頼。するとすぐに連絡があり、思わず身じろいでしまった。本来、立ち入ることが許されない同社の巨大施設「日立新車整備センター(日立VPC)」内で取材可能という返答だったからだ。

VPC(Vehicle Preparation Center)とは?

「VPCは、ドイツをはじめ世界各国の生産工場から輸入された車両をマーケットに送り出す前に責任をもって製品の品質・確認ならびに法的な検査を行う施設です。

その施設に長年在籍する専門スタッフたちが、日立VPC内の設備を活用して『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』のリフレッシュ作業を行っています」

取材冒頭、そう説明してくれたのは、『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』推進チームメンバーのひとりである寺迫靖久マネージャー(社長室 企業広報課)だ。今回の取材には、寺迫マネージャーと、石川グループリーダー(技術部 VPC管理課 業務管理グループ)、中根チームリーダー(エムビー・サービス日本株式会社 日立新車整備センター PDI-2チーム)の3名から話を聞くことができた。

取材場所となった、メルセデス・ベンツ日本「日立新車整備センター(日立VPC)」入り口
メルセデス・ベンツ日本「日立新車整備センター(日立VPC)」

日立VPCの役割は、海外から届いた新車メルセデスの補修・点検・整備をして「完成検査」を行うこと。要するに、新車メルセデスの “心臓部” といえる特別な場所なのだ。それゆえ、関係者以外立ち入り禁止の完全クローズドな拠点として知られている。

日立VPCには、200名以上の専門スタッフが在籍し、1日で170~180台ほどの新車が整備されているという。ちなみに、同様の役割を担う別拠点「豊橋新車整備センター(豊橋VPC)」があり、メルセデス・ベンツ日本はこの2拠点で、日本仕様の新車メルセデスを仕上げている。なお、豊橋VPCでは同社のブランド体験の場として、施設内の見学ツアーや新車の納車式が行われている。※2020年11月末現在コロナ禍において見合わせ中

はじまりの “汽笛” は、約5年前

本題である『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』と、日立VPCの関係は、今から約5年前の出来事が関係している。

2015年11月19日、メルセデス・ベンツ日本は日立VPCと豊橋VPCでの新車整備累計100万台達成を発表すると同時に、自社の設立30周年を記念して、2016年1月より『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』の開始を公表。以下にて、当時のリリース原文の一部を抜粋して記載する。

『 新車整備累計100 万台達成及び弊社設立30 周年を記念し、輸入車メーカー初の取組みとして、「ヤング・クラシック リフレッシュプログラム」を 2016年1月より開始します。

本プログラムは、メルセデス・ベンツを長期間大切にお乗り頂いているお客様への新たなサービスとして実施するものです。

弊社新車整備センターの最新の設備や、当時の故障診断機や技術文献、該当する車両の新車整備を担当した経験豊富なスタッフを活用して、車両のコンディションをオリジナルに近い状態にいたします。

お客様により良い状態でお乗り頂き、数十年経っても使用できる商品及びサービス体制の認知を図ります。MBJは今後も、メルセデスの魅力を余すところなくお伝えし、皆様に選ばれ、最も愛されるブランドを目指して邁進して参ります。』

「ヤング・クラシック」なメルセデスを愛するオーナーのために

「ダイムラー社は、今から約20~30年前に発売されていたメルセデスのモデルを “ヤング・クラシック”と定義しています。

旧車というにはまだ若い、ちょっと旧いメルセデスと捉えて頂ければわかりやすいと思います。

1980年から90年代に新車として発売されたメルセデスに、現代でも長く大切に乗り続けたいと願われているオーナー様へ、メルセデス・ベンツ日本として、感謝の気持ちを込めて、ヤング・クラシック リフレッシュプログラムはスタートしました」

そう教えてくれたのは、石川グループリーダー。同プログラムの対象モデルは、190クラスMR201、Cクラス MR202、Eクラス MR124、MR210、Sクラス / CLクラス MR126, MR140、SLクラス R129、Gクラス MR463とのこと。なお、AMG⾞両については要相談となり、並⾏輸⼊⾞両や改造⾞、カスタムカーは対象外となる。

『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』対象モデルは、190クラスMR201、Cクラス MR202、Eクラス MR124, MR210、Sクラス / CLクラス MR126, MR140、SLクラス R129、Gクラス MR463

同プログラムの最も重要なポイントは「日立VPC」で作業が行われる点だ。

1991年に設立された日立VPCには、ヤング・クラシックなメルセデスが「新車」だったときに活用されていた「技術文献」などがそのまま残っているだけでなく、当時の新車整備担当スタッフが現在も在籍。

この2点だけでも十分魅力的なのだが、極めつけがある。進化し続ける最新型メルセデスの補修・点検・整備などで使用されている最先端の高性能な設備を活用しながら、本格的なリフレッシュ作業が行われているというのだ。

日立VPCに在籍する経験豊富な専門スタッフが、ヤング・クラシックなメルセデスの車両状況をしっかり確認し、オーナーが希望する箇所のコンディションをオリジナルに近い状態に蘇らせるために必要な内容を提案してくれる。パッケージ化されたプログラムではなく、オーナーの希望と予算範囲内でリフレッシュ箇所を決めた上で作業を開始する流れとのこと。

石川グループリーダーの説明を聞き、メルセデス・ベンツ日本という “本家” が最高の環境を整えて、ヤング・クラシックなメルセデスを愛するオーナーのために、本気で取り組んでいることがよくわかった。

なお『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』で、しっかり認識すべきことは、その名の通りリフレッシュ作業を依頼できるサービス、という点だ。経年劣化などでくたびれてしまった車両を、オリジナルに近い状態へフルレストア(復活)させるようなサービスではないことを、寺迫マネージャーがキッパリ教えてくれた。

最新型のハイスペックな新車メルセデスの補修・点検・整備が行われている「日立VPC」内でヤング・クラシックなメルセデスのリフレッシュ作業が行われている

塗装作業も「日立VPC」内で行われている。塗装を行う技術者の作業着などに付着したゴミやホコリなどを高速のジェットエアで吹き飛ばす最新設備「エアシャワールーム」が導入されていた。メルセデス・ベンツ日本として、最高品質の塗装を実現するために設備投資を惜しまない姿勢が見てとれる

「リマン部品(リビルトパーツ)」がある

交換部品(補修部品)については、「純正部品」と「リマン部品(リビルトパーツ)」を提案してくれる。「リマン部品」とは、リマニュファクチュアドの略で再⽣部品を意味する。

再生産という言葉に品質を心配してしまう人もいるかもしれないが、それは杞憂だ。内部の機能部品はすべて新品に交換され、外側はきれいに洗浄された新品と同様の検査基準に合格した部品ゆえ、安心してよいだろう。

メルセデス・ベンツでは、世界中で取り外された部品を回収し、ドイツでリマン部品を再⽣する体制が整っているようで、その点は重要な強みだろう。

とはいえ、1989年から1996年頃に新車として発売されたすべてのメルセデスの交換部品を手配できるわけではない。国内に在庫がない場合は、全世界のメルセデス・ベンツネットワークでの部品在庫を確認し、じっくり探してくれるのは確かだが、どうしても入手不可能な交換部品があることを覚えておいてほしい。

外装・内装/機能部品・エンジン/トランスミッションまで対応

「パーツの表面がサビているときは『ドライアイスブラスト』で除去することが可能です。また、過去事例として、リアフェンダーパネルでサビが酷い箇所を切除したうえ、鉄板を切り継ぎ、溶接後に防錆(ぼうせい)処理を施した修理実績もあります」

「ドライアイスブラスト」によるサビの除去と、「サビたボディの修理」事例

そう教えてくれたのは、中根チームリーダー。これまで対応した事例について、とても詳しく教えてくれた。腐食が酷すぎる場合はリフレッシュ作業が困難な場合もありえるため、車両の状態によって作業対応範囲は変わってくる。『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』では、外装・内装/機能部品・エンジン/トランスミッションまで対応してくれる。

『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』の作業内容

申込方法や条件、保証について

『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』の作業を希望する場合は、メルセデス・ベンツ正規ディーラーに相談し、規定の用紙を使って正式に申込みを行う必要がある。

大前提として、対象モデルを所有しているオーナーで、メルセデス・ベンツ日本の会員専用Webサイト「Mercedes me」への登録(無料)が必要。走行できないほど車両が大破していたり、サビが酷すぎるなど、車両の状況によってはオーナーの要望を叶えられない場合もある。

タイヤやオーディオ、ETC、ナビは、リフレッシュ作業が難しい場合があり、また純正以外の部品や非純正アクセサリーなど、オーナーがネットなどで購入したものは「取り付け」可能だが、保証の対象外となる。なお、正規に輸入された車両であれば、正規ディーラーではない中古車販売店で購入した車両でも申込可能とのこと。

ちなみに『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』を利用しているオーナーの背景としては、親族(祖父・父など)が大切に乗っていたメルセデスを「形見」として、綺麗にして長持ちさせたいと、強く希望するケースが多いという。

長年乗り続けていて不調を直したかったり、中古で入手・購入したメルセデスのエンジンや内装など、気になるところを直したいニーズも少なくないようだ。このほか、純正塗料を使った全塗装の相談もあるという。同プログラム対応範囲として、塗装の色替えは可能で、経年劣化でくすんだボディーカラーでの再塗装にも対応してくれる。

申込後は、オーナー立ち会いのもと、同プログラム専門スタッフと正規販売店サービスアドバイザーによる車両確認を含む第三者協議のうえ、以下画像(表)の流れで進行。車両の状況と希望内容によってかわってくるが、リフレッシュ作業期間は平均2~3ヶ月とのこと。

『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』申込の流れ

「保証」がある点も魅力だ。期間は、納車日から1年(但し第三者へ譲渡した場合は保証を継承できない)で、塗装を含む作業箇所、および交換した純正部品が保証対象となる。なお、第三者を介して入手した部品や純正部品以外の部品作業箇所以外の部位は保証対象外となる。

◆ 「オーナー表彰制度」がある

このほかとして、とても気になる取り組みがある。『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』と直接的な関連はないものだが、2010年から継続的に実施されている「オーナー表彰制度」について紹介したい。

同制度は走行距離が10万km/20万km/30万km/50万km/100万kmに到達したオーナー、または保有期間が10年/20年/30年以上のオーナーを表彰する、という取り組みだ。

メルセデスを愛するオーナーの「証」として、特製エンブレムが贈呈されるなど、メルセデスを愛車として長く乗り続けているオーナーにとって嬉しい制度で、開始からすでに2万件以上の申込みがあったとのこと。詳細はメルセデス・ベンツ日本公式Webサイト内「オーナー表彰制度」紹介ページを、ぜひご覧いただきたい。

2017年から「オーナー表彰制度」を継続的に展開

◆ 旧車乗りにとって重要な「救済」

コロナ禍のいま、クルマの利用頻度は増える傾向にあれど、新車購入ニーズは数年前から確実に減少し続けている。買い換えず、一台のクルマを10年や15年、20年と、長く乗り続けるユーザーが今後ますます増え続けることが予想できる。

今回紹介したメルセデス・ベンツ日本の『ヤング・クラシック リフレッシュプログラム』は、輸入車インポーターの立場として、プライドと責任、熱意をもって粛々ながらも本気で展開されている。こういったアフターサービスは、旧車乗りにとって無くてはならない、とても重要な「救済」といえるだろう。

国産自動車メーカーや輸入車インポーター各社が2016年ごろから取り組みはじめた旧車関連プロジェクトは、自社が世に送り出した数多くのクルマたちを、文化的なものとして大切に思い、クルマを愛するオーナーたちが、安心・安全な状態で現代でも乗り続けられるようにサポートする、とても意義深い取り組みだ。

しかしながら、対象モデルや対応範囲が限定的で、認知度が高いともいえない。より幅広い車種に対して、内外装やエンジン、足回りなどのリフレッシュやレストアサービスなどが強化拡充され、安定的かつリーズナブルな価格で交換部品(補修部品)を入手できるようになれば、クルマ好きがもっと増えるように思う。その盛り上がりが後押しとなり、旧車の自動車保険や税制度が見直されるなど、旧車を維持しやすい日本社会になっていくことを強く望む。

《カーケアプラス編集部@金武あずみ》

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