自動運転ロボット ZMP『ラクロ』に試乗---乗り味は想像以上に快適だった

自動走行できる一人乗り用自動運転ロボット「ラクロ」(ZMP提供)
  • 自動走行できる一人乗り用自動運転ロボット「ラクロ」(ZMP提供)
  • 満開の桜の下、「ラクロ」は何の操作もなく桜並木を走り切った
  • 走行する前にルートをスマホなどで設定する(ZMP提供)
  • 走行途中の施設などの案内を行うこともできる(ZMP提供)
  • シートは大きめで座り心地も良好。乗車時には氏0とを回転させることもできる
  • 走行中はディスプレイ上に、緊急停止用のストップボタンが表示される
  • 進路上に人や施設などの存在を発券すると自動的に避けて通過していく
  • 路地で車両が通過する際は手前で停止してやり過ごした

2019年7月にZMPから発表された自動運転の一人乗りロボ製品「Robocar Walk」、今年5月にいよいよ「RakuRo(ラクロ)」として発売される。これまでに介護福祉施設・観光地・商業施設・空港等で実証実験が繰り返されてきたが、このほどそのラクロに試乗する機会を得た。

試乗コースは満開の桜の下を走る約1kmのコース

ラクロは、走行中に周囲とコミュニケーションを取りながら自動走行する一人乗り用ロボットだ。ZMPによれば、製品名に含まれる「ラク」は「楽」、つまり自動走行により移動を「ラク」にするロボットのことを表現。コンセプトとしては、本人も付き添う人も車椅子やシニアカーの運転から解放されることで、移動中の景色や周囲と会話を楽しみながら走行できることを追求しているという。

走行中は3D-LiDARやステレオカメラなどを使って周囲の状況を把握し、障害物を回避しながら目的地まで自動走行する。車両としてのカテゴリーは電動車椅子(セニアカー)と同じで、時速6km/h以下で公道を走行可能。ディスプレイ上で笑顔やウィンクといった表情を見せると同時に、挨拶やお願いといった声によるコミュニケーションを取りながら自動走行する。

試乗した場所はZMPの本社(東京・小石川)から播磨坂さくら並木を経由した小石川5丁目交差点まで約500mの距離。ここを往復して計1kmほどを試乗した。当日はやや北風が吹くものの、青空が広がる快晴。桜が満開となった時期とも重なり、その下を気持ち良く走行することができた。

走行するにはあらかじめ専用アプリをインストールしたスマホやタブレットで目的地を設定することから始まる。この設定が終了したらディスプレイ上に表示された「スタート」ボタンを押すだけ。それ以外の操作はまったく必要がない。なので、ラクロには電動車椅子にあるようなハンドルもなければ、その他のスイッチは何もない。走行中に強制的に停止させる「ストップ」スイッチがディスプレイ上に表示されるだけだ。

一緒にある人と会話を楽しみながら自動走行

ラクロには左右にある小さな扉を開いて乗車するが、シートは必要に応じて左右に回転することができ、これを活用すれば車椅子からの乗り換えもスムーズに行える。シート自体も包み込むような大きさでたっぷりとしたサイズで、ホールド性も上々。座り心地は結構いい感じだ。

「スタート」ボタンを押すと、一瞬ラグを置いた後、ラクロはそろり走り出した。これは歩道に出る際に左右を確認する作業をしたからで、その後は設定したルートに従い歩道上を走行。速度は人が歩くのとほぼ同じ。徒歩で歩くZMPのスタッフといろいろ会話しながら走ることができ、カーブに差し掛かっても迷うことなく走行を継続した。

走行中にすれ違う人に対しては緩やかに避けて行く感じ。人が直前を横切った場合では即座にストップ。人がいなくなると再び走行へと自動的に復帰した。時折、障害物もないのにカーブを描いて走行することがあったが、これは歩道の周辺にある物体に対して過大に反応してしまったことが原因らしい。この辺りはパラメーターの調整で対応できる範囲だという。

また、路地を横切るときはその手前で一旦停止し、左右を確認して横断する。ZMPによるとセンサーによって150mほど先まで確認しているため、横断できるかどうかは十分判断できるという。目の前を横切る車両はきちんとやり過ごしてしたし、走行-停止の切り替わりは特に不自然さは感じなかった。

緊急停止用として目立つ位置に専用ボタンが欲しい

乗り心地は歩道の凹凸に対してはそのまま伝えてくる感じで、歩道にある視角障害者用タイルを乗り越えたときも結構な揺れがある。この感覚は一般的な電動車椅子と同じような印象だ。歩道の傾きには車両全体もそのまま傾くが、そういった場合でもシートの上にしっかりと座っていられるので不安を感じることはなかった。

一方、少し不安を感じたのは歩道を走る自転車への対応だ。自転車の速度は想像以上に速く、さらに動きが予測が難しい。試乗中も直前を遮るように横切ることがあり、その時は強制停止したいと思ったが、何とかぶつからずにギリギリ停止して事なきを得た。一応、画面上にはソフトボタンが用意されているが、この場面に遭遇したときはこのスイッチが分かりにくい。できればストップのボタンを目立つ位置にハードボタンがあってもよいとも感じた。

ラクロがウリとしているコミュニケーション機能は、人とすれ違う度に「こんにちは」と声を発しながらフロントにある“眼”でウインクして愛想を振りまく。また、ラクロの前に立ってしまった人に対しては「道をお譲りください」と進路を空けてもらうよう声を発して対応した。それらの表情により、街中での注目度は抜群。逆にそれが存在を目立たせ、安全にもつながるとも思った。

このラクロは基本的にリース契約で販売することとなっており、月々10万円+メンテナンス料となる見込み。個人で契約するというよりも、施設単位での利用を想定しているという。すでにいくつかの施設と契約が交わされたということで、この5月以降、様々なシーンでラクロと出会うことになりそうだ。

《会田肇》

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