15億円調達サブスク「カルモ」、次のステージへ…ナイル高橋社長インタビュー

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今回、ナイル株式会社が、「マイカー賃貸カルモ」の事業のために「未来創生2号ファンド」を運営するスパークス・グループ株式会社をリードインベスターとし、SBIグループ、AOKIグループなど複数の投資家から15億円の資金を調達した。未来創生ファンドはトヨタ自動車が「将来の自動車産業を支える、新たなイノベーションに向けた研究開発投資を本格化させる一環」として参画しており国内外の知能化技術、ロボティクス、新素材といった分野の有望企業に集中的に投資されている基金である。この巨額調達で、カルモはどのようなステージに向かうのだろうか。ナイル株式会社代表取締役の、高橋飛翔氏に展望を聞いた。

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トヨタなどから15億円を調達

---: 15億円の資金調達が決まりました。おめでとうございます。

高橋:ありがとうございます。ナイルは、デジタルマーケティング事業、スマートフォンメディア事業のほか、昨年、カルモを立ち上げて、モビリティサービスを行ってきました。特にカルモを1年でここまで成長させたことを評価してもらえ、日本のモビリティに貢献したいという意気込みが伝わったのだと思います。

高橋:今回は、資金だけでなく、出資先との新しい関係ができたことも大きいと思っています。トヨタ・グループとコミュニケーションできる立場になれたことはとても嬉しいです。我々がメインでやっているデジタルマーケティングは、ある意味、表層的なものですが自動車は製造、不動産、金融などいろいろからみ、産業の核を構成している。さらにSBIグループは、金融+インターネットの会社です。カルモも個人向けの車両リースがベースですから金融商品ともいえます。これからこうした企業と協業できればさらに面白いモビリティの仕組みが作れると思います。

---:昨年1月にカルモを始めてから、1年でここまで成長できた原動力はなにでしょうか。

高橋:これまでに累計で3000件の契約があり、開始からずっと右肩上がりで申し込みをいただいています。ナイルは自らを「デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団」と定義しており、クルマのサブスクリプションのニーズをデジタルマーケティングによって効率よく掘り起こすことに成功した結果だと考えています。

---:効率的なデジタルマーケティングとは?

高橋:わかりやすく申し上げますと、この1年でweb広告やサイト上のコンテンツなど、さまざまなマーケティング施策を組み合わせて試行錯誤した結果、100万円を稼ぐのに100万円以下の投資で済むようになったということです。100万円を稼ぐのに150万円の広告をかけていては逆ざやになってしまいますからね。

---:なるほど。今回調達した15億円という資金は、引き続きデジタルマーケティングに投下して利益と規模をケースアップするというシナリオなのでしょうか。

高橋:確かにそこが基本です。しかし、1年間カルモを行ってみて、やはりweb広告には限界があることもわかったので、カルモを成長させるための次の戦略を考えています。さらにこれからは、これまでできなかった新たな手法やサービスにも挑戦してゆきます。

◆中古車カルモで価格とバリエーションを強化

---:例えば?

高橋:これまで新車のみの扱いでしたが中古車もサブスクリプションで借りることができるようにします。初夏のスタートを目途に、3000台のストックを準備しているところです。

---:中古車を始める理由は?

高橋:価格面のメリットがあり、ユーザーのリクエストが多いことです。ユーザーは、クルマの品質が向上して、中古車でも十分、走ることを知っています。いま、カルモを支持してくださる方の理由は価格への評価が高く、中古車を扱うことでさらにその期待に応えていきたいですね。

---:カルモの強みが発揮される層とは?

高橋:現在のカルモのユーザーは、8割が地方都市~郊外の方です。都市部から30分くらいで移動できる範囲というイメージなので、通勤ニーズではないかと分析しています。

---:通勤する方に、料金定額のサブスクリプションがマッチしていると。

高橋:通勤する、ということは、会社員の方ですよね。毎月の給料の額が決まっているので、毎月、一定額というカルモの料金システムにメリットを感じていただいている。中古車を加えれば、さらにクルマに使う料金を低く抑えられ、さまざまな生活のプランがたてやすくなります。

---:家のローンも、旅行積立も、安心して考えられそうです。

高橋:さらに、中古車を扱うということは、輸入車もラインナップに加えられます。

---:ユーザーが幅広い車種から選べるということですね。

高橋:はい。最終的には国産車を選ぶとしても、輸入車を候補にして吟味する楽しさや、幅広いラインナップのなかから“選んだ”という満足感を体験してもらえると思っています。

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ブランド力強化で地方を攻める

---:先ほど、web広告の限界と次の戦略があるとおっしゃいました。

高橋:カルモを正しく理解してもらうためにも、ユーザーが拡大している地方都市を中心にTVCMを考えています。いま、多くの方に認知されているゲーム会社のいくつかは、2013~2014年あたりにTVCMを打ってブランドを確立してきました。ここぞというタイミングで予算を投じて認知度を一気に上げる。カルモにはいま、そのタイミングがきていると思います。同じようなマイカーサービスでも、ほかの会社はよくても、カルモは信用できないという声もあります。その差はなにかというと、知名度、認知度、スマホで検索して一番上に上がってくるかどうか。カルモのブランド力を上げることが、現時点での課題だと感じています。

---:ブランド力の向上は、スタートアップにつきものですね。TVCMで繰り返し社名を目にすることで親しみがわき、安心感へとつながります。特に日本人はその傾向が強いように思います。

高橋:TVCMは大きな投資になりますが、ネットを見ない人もいるし、ネットよりテレビ画面から伝わる情報に親近感を持つ人は多いと思います。ただ、ナイルは「デジタルマーケティングで社会を良くする事業家集団」です。TVCMであってもデジタルマーケティングの一部と捉えてブランド力向上など数字に表しにくい投資効果をもチューニングしながら進めるということに挑戦します。

---:地方を攻めるとおっしゃいましたが、やはり軽自動車が中心になるのでしょうか。

高橋:現状の地方のメイン顧客は軽自動車であることは認めます。ただ、軽自動車にこだわっているつもりはありません。ユーザーが、価格を求めるのであれば、車両本体価格の安いものや中古車というように、ニーズによりそえる車両をそろえるつもりです。ただ、価格戦略という視点でいけば、軽自動車や年式といった車両の安さに頼るのではなく、もっとお得に使えるようなやり方で、ユーザーのニーズに応えたい。

---:例えば?

高橋:サブスクで借りたクルマを、さらに何人かでシェアするシステムがあってもいい。もしくは、別の人に貸すとか。

---:それぞれの人が、クルマを使っている時間と、払っている料金のバランスがとれていると思える使い方ができる。これは人気が出そうです。

高橋:クルマがある生活は、楽しいですよね。運転するのも楽しいし、移動するあいだに移り行く景色を眺めるのも気持ちがいい。小さなお子さんがいる家族なら、ドアツードアで荷物もぜんぶ運べるのは本当に便利です。でも、経済的に所有できない人がいる。そこは、我々のアイディアで解決できるはずだと思っています。

◆”クルマのサブスクなら、カルモ”といわれたい

---:資金があれば、一気にそのアイディアを実現させていけますね。事業が一気に拡大していきそうです。

高橋:カルモも人を増やします。現在、15人ですが、一気に3倍以上、50人規模にしていきます。エンジニアもセールスチームも増やします。全体的にふくらませるイメージです。

---:人が増えると、いまいるオフィスでは手狭になります。人も増えたし事業も拡大する。スタートアップのなかには、ブランド力を上げるために、新しいビルのオフィスに引っ越すケースもあります。

高橋:うちはそれはやりません(笑)。人が増えるので、もうワンフロア借りることはありますが、このまま歓楽街近くの雑居ビルの一角で続けます。資金は事業のために使いたいですから。

---:ところで高橋さんはこれまで、カルモのサービスを「マイカー賃貸」といっていました。その後は、「マイカーリース」と説明したこともありました。でも、今日は初めて「サブスクリプション」「サブスク」という言葉を使っています。これには理由があるのでしょうか。

高橋:カルモを始めた1年前は、サブスクという言葉はあえて使いませんでした。当時はまだ、「サブスク」というシステムも、名称も浸透していませんでしたから。なので、最初はわかりやすい「マイカー賃貸」。そして、「マイカーリース」。でもいまは、サブスクという言葉自体が流行語のようにだれもが口にするようになってきたので、あえてカルモも、サブスクといい始めました。イメージ戦略は大事ですからね。(笑)

---:確かに、洋服にしろ、美容院にしろ、レストランの飲食でもサブスクというシステムが一気に浸透し、事業として始まりました。一般の人が、サブスクを生活のなかにとりいれるのが当たり前になってきています。

高橋:これまでのクルマは所有が基本でした。でも、ここでもサブスクが一気に広がってきています。新しいやり方だけに、この世界に強者はいない。大きなチャンスです。このチャンスを活かして、クルマのサブスクなら、カルモといわれるまで一気に成長させたいですね。

---:今年に入ってトヨタも愛車サブスクリプションというキャッチで「KINTO」というサービスを作りました。ただ、価格帯や、契約のパターンなど、狙っているビジネスが異なる感じがします。

高橋:車両を販売してきたトヨタのようなメーカーが、KINTOを作ったのはすごい決断だと思います。モビリティの変化に本気で取り組もうとしている。トヨタがサブスクに参入したことで、サブスク自体が注目を浴び、カルモもKINTOと比較してもらえることは、とても光栄なことです。

---:トヨタはモビリティ会社になると、宣言しました。そのくらい、クルマの世界は大変革を迎えます。

高橋:例えば2040年、クルマの未来はこうなっているだろうという方向性はおおよそわかります。ただ、そこへの到達方法は、だれもが模索をしています。我々、スタートアップは大企業とはちがい、身軽なので自由になんでもできる。これは最大の強みです。カルモのやり方で、日本のモビリティ社会を作っていきたい。2040年になったとき、世界中から「日本ってすごいぞ!」といわせるモビリティ社会を作りたいですね。

---:自動車メーカーのない国ではなく、トヨタをはじめとする名だたる自動車メーカーがそろっている日本でやるというところは、面白いしわくわくします。

高橋:「マイカーの概念を変え、だれもが自由に移動を楽しむ社会を作る」というのがカルモの事業ミッションです。これからのモビリティを牽引し、さらに、このノウハウを活かしてほかのことにも貢献していきたいです。これから、面白いものが、どんどんできますよ。期待していてください。

---:楽しみにしています。ありがとうございました。

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《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「ハチ公物語」「しっぽをなくしたイルカ」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。最新刊は「法律がわかる!桃太郎こども裁判」(すべて講談社)。

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