今年も大盛況だった「東京オートサロン2019」。クラリオンブースではスバル『レヴォーグ』や三菱『デリカD:5』に純正採用された「Quad View」ナビに注目が集まったが、車内エンタテイメントとして盛り上がりそうと感じたのが、参考出品された「振動シート」だ。
音域の低域をカバーするには、サブウーファーを組み合わせることが多い。しかし、小音量時や高速走行時はどうしても低域が表に出にくくなる。そこで身体に直接、振動で低域を感じさせることで、それを克服しようと開発されたのが「振動シート」である。
この技術は同社が「安全と安心」を求めて、警告をドライバーに伝える機能として開発したもの。シート内には小型の車両用エキサイター(振動板)を組み込み、サブウーファー入力と同じように音声信号を振動へと変換する。振動板はシートのバックシートに取り付けており、ここに座るとちょうどシート背後から振動が伝わってくる。
音声信号はフルデジタル・サウンドプロセッサー「Z3」からアナログ出力されたものが用いられる。用意された音源のライブ演奏やアニメなどの映像に合わせ、時に小気味よく、時にダイナミックに身体を震わせる。デジタル音源をアナログで変換出力するため、ラグが発生しやしないかと心配したが、それは無用だった。むしろ振動が与えられることによって低域が効率よく体感できたのだ。
振動はボリュームに連動するため、小音量時は振動も弱くなり、ボリュームを上げればそれに応じた振動が伝わってくる。無駄に振動ばかりを与えるのではなく、自然に低音が伝わってくる感じだ。この「振動シート」はまだ試作レベルにあるとのことだったが、ドライバーはもちろん、リアシートに座る人もサウンドを身体全体で楽しめる。その完成度は高く、新たなカーサウンドの世界を感じたのは確かだ。
担当者によれば「体感した人からも概ね好評で、今年の夏ぐらいまでには商品化したい」とのことだった。とはいえ一番の関心事は価格だ。体感した人に欲しい価格帯を聞くと「一番多かったのが1万円台」(担当者)だったという。さすがにその価格は無理そうな雰囲気だったが、「2万円台ならいけるかもしれない」(担当者)とも。