【DS 7 クロスバック 1000km試乗】多分これ、今、世界で一番使えるACCかも…中村孝仁

試乗記 輸入車
DS 7 クロスバック グランシック ブルーHDi
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DSのフラッグシップモデル、『DS 7 クロスバック』には、1.6リットルの直4ガソリンエンジンを搭載したものと、2リットルのターボディーゼルが存在するのはご存知の通り。

そのディーゼル仕様をお借りして、10日間1000kmを走破してみた。試乗会での1時間試乗では試すことの出来なかった、あれこれを今回は試してみた。その結果、驚くべきことに、このクルマに装備されているDSコネクテッドパイロットと名付けられたACCの出来は、より高度な仕様とされたメルセデス『Sクラス』や、アウディ『A8』に装備されるACCと肩を並べるか、あるいは同等以上の性能を示し、この10日間の試乗で恐るべき実力を発揮してくれた。

急な割り込みもガッチリサポートするACC


高速道路を使った移動は、中央道で小淵沢まで、関越道で碓氷軽井沢まで。片道およそ150~180km程度の行程だが、スピードの設定を上手くすることと、前車の追従を上手く使えば、この間ただの一度もブレーキやアクセルの操作は必要ない。某メーカーの同一車線自動運転は完全に達成できる。ここまでは既に他のACCでも可能なことだった。

流石に高級なものではないから、ウィンカーを出すと勝手に車線を変更してくれることはないのだが、中央道の帰路で嵌った渋滞中は、ドライバーがやることといったら、ただ発進の際に少しだけアクセルを踏むことだけ。あとはすべてクルマ任せが可能であった。

それならばと、今度は渋滞する環状8号線でこのACCを使用してみた。車線変更をせず、東名環8出口から環状8号線をひた走り、関越道の入り口まで。ここでもドライバーの仕事はただ停車したクルマを発進させるためにアクセルを少し踏む事と前方を監視することだけ。それが嫌なら、ステアイングポストに付くACCのリジュームスイッチを押すだけである。これほどフールプルーフに運転できるACCは、僕の試した限りではメルセデスの上級モデルに付くものだけ。

驚いたのは、急な割り込みに対してもガッチリと緊急ブレーキをかけて回避してくれたことだ。特に横方向を監視するレーダーが付いているわけでもなさそうだが、この使い勝手の良さと使えるACCには驚かされる。因みにクルージングスピードを65km/hに設定し、前車との車間が空いてこのスピードで停車している前車に近づいても、きっちりと止めてくれる。これは恐るべき性能だ。ACCは作動に限界設定の低いものが多く、前述したような状況では途中で放り出され、作動が解除されてしまうものが多く、要は信頼感に乏しいのだが、このDS7のものは、少なくとも試乗した10日間、完璧にこなしてくれた。

ACC作動で行われるレーンキープアシストもかなり介入が顕著で、ステアリングはコーナーの白線に沿ってかなりグイグイと自動的に切られていく。ただし、こちらはたまにさぼる時があるので、全面的に信頼してはいけない。

フランス車が大きく進化した


ディーゼルのブルーHDiは、ユーロ6.2の排ガス規制に適合したクリーンなもの。例えば音に関して話をすると、車内騒音に関しては、少し大きめで、マツダの2.2リットルよりは劣る。車外に関しても同様だが、BMWあたりと比較すると、車外騒音は大差ない印象。性能的には1速からぶん回すのではなく、2速以降でグイッと踏み込んでいくと、あっという間に流れをリードする。トルク感も非常に強く力強さは際立つ。

コンフォートモードでしか機能しないアクティブスキャンサスペンションは、確かに日中普通に走り回る時は快適でスムーズな乗り心地を提供してくれるものの、シトロエンがハイドロのサスペンションを出した時ほどの絶対的な優位性はなく、ハイドロの後継と呼ぶには、まだまだ開発の余地あり…だと思う。

シートはやはり快適だ。一日で400km近くを走破しても、疲れ知らずですむ。ただしこの疲れ知らずは、例のACCによる半自動運転の効果が大きいのかもしれない。関越道の帰路は大渋滞があって、それを避けるために一旦一般道に出て、ACCを入れたまま地図とにらめっこをしながら帰ってきたが、そんなことをしたら、自分で運転している場合は非常に神経を使うので、難しいのだが、例え信号が赤でも確実に止まってくれる(前車に追従している限り)という安心感と信頼感があると、それが可能になる。

走行モードはエコに始まって、コンフォート、ノーマル、スポーツとあるが、スポーツモードに入れると、『308』同様、スピーカーから疑似音を出してエクゾーストサウンドが変わるギミックが付く。まあ、それほど気持ちよいサウンドではないが。

オプション装備されていたナイトビジョンも試してみた。画面だけを見て運転するのはまず無理だが、人や自転車が横切ったり、近づいてきたりすると、すぐさま反応して黄色い枠で注意喚起する。前方を見ていてもその黄枠は僅かだが視界に入る。暗い夜道では有効かもしれない。また、エンジン始動時にぐるりと回って出てくるBRMの時計は、夜と昼と出は全く異なる表情を見せ、夜間走行時の存在感は一際高い。

1000km走った総合燃費は14.9km/リットル。関越を往復した高速中心だと16.3km/リットルにまで足を延ばす。ガソリンが高い今は給油の度に胸をなでおろしたことは言うまでもない。これまでとかく電子デバイスには後ろ向きだったフランス車にあって、初めて大きく進化したところを見せたのがこのクルマである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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