マツダ アテンザ 改良新型、エクステリアデザインを部分的変更にとどめた理由とは

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マツダ アテンザ 改良新型
  • マツダ アテンザ 改良新型
  • マツダ 商品本部の脇家満 主査
  • マツダ デザイン本部の玉谷聡チーフデザイナー
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2012年に発売されて以来、毎年のように改良が施されてきたマツダ『アテンザ』。登場から6年目となる今回は「これまでで最大の改良」になるという。

今回の改良で、アテンザはどのように変わったのだろうか。テーマは「クルマを愛するお客様の毎日を、もっと活力と充実感に満ちたものにする」というものだと説明するのは、商品本部の脇家満 主査。「さまざまな領域で次世代の思想や技術を取り入れ、ブランドのフラッグシップにふさわしい良質なクルマに仕上げました」とのことだ。

進化させたポイントは、大きく3つあるという。それは「いっそう磨き上げられた、圧倒的な美しさと力強さ」、「革新と伝統の融合で創り出した質感」、「“Effortless Driving”をキーワードに掲げた、人馬一体の走行性能」というもの。最初の2つは主にスタイリングデザイン、最後はエンジニアリングに関わるものだ。

◆フラッグシップにふさわしいデザインを模索

デザインの進化について「今回はマツダとして次の世代の商品が出てくる中でフラッグシップとして存在してゆくことになる。これまでの改良も入魂でやってきているが、非常に大きな力を注いでいます」と語るのは、デザイン本部の玉谷聡チーフデザイナー。すべてのマツダ車に適用される「魂動デザイン」が次の段階に移行しつつある現在、従来の「魂動」の表現をいかに洗練させ、かつ将来へと向かうものにするかが焦点だったということだ。

今回の改良におけるデザインのキーワードは”Mature Elegance(マチュア・エレガンス)”で、これには2つの思いが込められていると玉谷氏は語る。まずひとつめは「マツダ、そしてアテンザがもともと持っているスポーティ・エレガンスという表現を、より強めていきたい」というもの。これはアテンザという車種単体で捉え、進化と成熟を表現しようとするものと受け止めればいいだろう。

そしてもうひとつは「マツダのフラッグシップとして、レベルをより引き上げたい。ブランドの行く方向性を一段引き上げる、ということを織り込んでいきたい」という、ブランド全体を意識したもの。フラッグシップのデザイン水準をさらに引き上げることによって、これから登場するすべてのマツダ車をより高いレベルに導こうとするものだ。いわば「ブランドイメージのデザイン」に関わる要素と言えばいいだろうか。「内外装とも、成熟した大人のデザインを作っていこうというものです」と玉谷氏は説明する。

◆部分的変更ながら、全体でエレガンスを表現

それでは従来モデルからどの部分がどのように進化したのだろうか。「もともとボディ全体のバランスは精緻にコントロールされている。だからボディに手を加えると、バランスが崩れてしまうことがわかりました」と玉谷氏。そこでエクステリアについてはフロントエンドとリアエンド、それに前後ランプやホイールなど艤装品の改良にとどめ、ボディ側で手が加えられたのはセダンのトランクリッドのみ。ただし「部分的な変更ではあるが、クルマ全体の骨格を意識して、全体でエレガンスを表現しています」とのこと。

新型アテンザの改良ポイントの特徴は「走りのフィーリング」の進化や、NVHを含めた質感の向上。これを視覚的にも表現するために、いっそう低重心で彫りの深い造形を追求したと玉谷氏。「従来モデルのボディサイドでは、前部は上下の動きを大きく感じさせ、後部はウェッジしている」と解説。この若々しいスポーティ表現のエモーションやリズムは残しながら、前から後ろへの軸を強調するというのが今回の変更点だ。表現したかったのは「走り抜けていったときに、伸びやかなエレガンスの余韻がそこに残るような感覚」だという。

◆線の「勢い」と「流れ」を匠に操る

また玉谷氏は、エクステリアの変更点について詳細に説明した。そのなかでもっともインパクトがあるのは、グリル下部からヘッドランプに向かってV字を描く「シグネチャーウイング」の表現を変えたことだ。従来はグリルの上端に迫る位置で屈曲させ、ヘッドランプの上辺に繋がっていた。これを新型ではランプ全体と融合するような形状に変更し、枝分かれした末端がヘッドランプ下辺に沿って伸びるようになっている。

これには「線の勢い」の方向を変えることで、印象を変化させる狙いがある。従来はV字の線の勢いがボンネットを経由し、フェンダー側面やドアで弧を描くキャラクターラインへと導くことで躍動感を表現していた。いっぽう新型では、この躍動感はそのまま残しつつ、ランプ下辺から水平にボディ側面へ回り込む流れを強調。これによって見る人が感じるフロントエンドからボディ後部へ向かう「線の流れ」を水平基調にするのが狙いだと玉谷氏は説明する。

またグリルの輪郭は下端をさらに下げ、視覚的な重心を下げている。「日本ではナンバープレートに隠れてしまいますが、それでもV字に見えるように形状を吟味しています」とのこと。興味深いのは「ひと手間かけたクラフトマンシップを表現した」というグリルのデザインだ。従来モデルでは6本の水平フィンがワイド感や落ち着きを表現していたが、新型ではメッシュ状の意匠に変更。これはボディ側面やバンパー下部で水平方向の動きやダイナミズムを強調したことと矛盾しているようにも思える。

この変更の意図は「開口部そのものを奥に深め、シグネチャーウイングの立体を際立たせる」こと。フロントエンド全体の抑揚と立体感を強めつつ、シグネチャーウイングの存在感をさらに強調したかったのだという。水平方向のダイナミックな流れの演出はシグネチャーウイングにまかせ、グリル開口部では彫りを深くして立体感を強調することで、フラッグシップとしての風格を増す狙いがあるようだ。

この意図はグリルのメッシュ形状からも感じることができる。独特の形状は光を受けるとしっかり反射して、面を表現するため。そして左右非対称なのは、遠目に見たとき中央に折れ線があり、まるで左右が別の面であるかのように見せるため。斜め前方から見たとき、ボディ全体の立体感や奥行き感が強調されるデザインというわけだ。

前後バンパーの形状やランプのグラフィックも、水平感と低重心感のアップと「前後に貫く流れ」の強調が狙い。ヘッドランプはスモール点灯時にモジュールの下半分が光るグラフィックとなった。リアのコンビネーションランプもレイアウトが変更され、リアエンド全体のワイド感を強調するものになっている。

◆ワゴンはたたずまいをしっかりと

ちなみにワゴンでは、コンビランプやハッチゲートは従来モデルからそのまま踏襲し、バンパー形状のみが変更されている。この理由は「セダンとはボディ骨格の表現が異なる」からだという。「セダンと同じ表現をしようと試みたが、水平方向の流れを強調する立体を作ってみたところ、キャビンの視覚的な”重み”を支え切れなさそうな雰囲気になった」と玉谷氏は振り返る。

「スリークなキャビンが後方まで伸びてきて、リアエンドでストンと降りてくる。この重みをしっかり支えるための肉感が、リアフェンダーに必要」とのことだ。このためバンパー下部の黒いプロテクター風表現も廃止。リア周り全体の視覚重心を下げることで、しっかりしたたたずまいを強調している。

このほかワイド感を強調したマフラーエンドの位置や形状、長さと存在感を強調したホイールのスポーク形状やカラーリングなど、エクステリアだけでも見直された部分は多岐に渡っている。これは今後数年にわたってブランドを牽引するフラッグシップとして、洗練と進化を追求した結果なのだ。
《古庄 速人》

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