SUPER GTのカーボンモノコックは、軽量高剛性なだけじゃなかった…人とくるまのテクノロジー2018

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東レのブースに展示されていたSUPER GTのGT500マシン用カーボンモノコック。オートクレーブ製法で製作されている。
  • 東レのブースに展示されていたSUPER GTのGT500マシン用カーボンモノコック。オートクレーブ製法で製作されている。
  • 前端部にはサブフレームを取り付ける部分に、精度を高めるため圧縮成形のCFRP板から削り出した部品が貼り付けられている。
  • フロントサイドと同じ形状のサイドインパクトストラクチャーがリアにも備えられる。
  • コックピット内も同じカーボンクロスのプリプレグで製作されているが、内部にはUDやアルミハニカムなどが使われ、剛性や強度を高めている。
  • こちらはKARL STORZのブースに展示されているDENSO KOBELCO SARD LC500。ヘイキ・コバライネン / 小林 可夢偉の元F1ドライバー組がステアリングを握るマシンだ。

世界最高峰のツーリングカーレース、SUPER GTのGT500クラスのマシンは、もはやツーリングカーと呼んでいいのか分からないほど、市販車とは別物の構造になっている。2014年からは、高性能かつコストダウンを実現させるべく、全メーカーのモノコックが共通化されている。

そんなGT500マシンのカーボンモノコックをじっくりと眺められる機会が、今回の人とくるまのテクノロジー展であった。東レのブースに展示されていたのは、まさに本物のカーボンモノコック。東レの子会社、東レ・カーボンマジックが製作しているものだ。

見た目にはやや粗めに織られた綾織りのカーボンファイバークロスを使っているが、説明員によれば内部にはより特定の方向に強度を高めるためUDと呼ばれるカーボンファイバーを用いているそうだ。どちらもカーボンファイバーの中でも非常に高弾性なタイプが使われている。

CFRPの成形品としてはかなりのサイズだが、アウターシェル部分は一体成形で、オートクレーブ製法により一度に加熱成形されている。これはかなり大型のオートクレーブを持っていなければできない。技術と設備の両面が揃っているカーボンマジックならではの仕事と言えるだろう。

日産『GT-R』とレクサス『LC』はフロントエンジンのFRだが、ホンダ『NSX』はミッドシップのMRだ。それでもモノコックの後壁の形状を変えるだけでほぼ同構造のモノコックを利用可能にしているそうだ。FRとMRで同じモノコックを使えるのはGT500のボディサイズの余裕と、コンパクトなパワーユニットのおかげだろう。

よく見るとモノコックの四隅から同じ形状の筒状の部品が突き出ている。これはサイドインパクトストラクチャーといい、モノコックとボディの間を支えることで、側面からの衝突時にドライバーを守るもの。このあたりも競争部分ではないためモノコックを共通化したメリットと言えるだろう。

以前はNSXのSUPER GT500マシンの開発は童夢が手がけており、カーボンマジックはNSXの大半を手がけていたが、現在はNSXのGTマシンはホンダが自社開発しており、カーボンマジックは東レの子会社となったことからモノコックを手がけるだけになっているそうだ。

内視鏡メーカーのKARL STORZのブースには、このモノコックを採用したLEXUS TEAM SARDのDENSO KOBELCO SARD LC500が展示されていた。同社はSARDに内視鏡を提供するテクニカルパートナーなのだ。

《高根英幸》

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