走り出した「AIタクシー」…どこにお客さんがいるか近未来を予測

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  • 走り出した「AIタクシー」。近未来予測が持たらすもの
  • AIタクシーのサービス提供イメージ。500m四方単位の乗車予測が見られる
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■近未来人数予測とは

 予測に使われているのは、タクシー会社が保持する運行データに加えて、気象データ、施設データなど。そこに、ドコモの持つ人口統計データおよびそれを活用した“近未来人数予測”を掛け合わせてAIが分析をおこなう。ドコモではこれまで、モバイル空間統計というかたちでエリアごとの人口統計データを作成していたが、あくまで過去(約1ヵ月前)の人口統計しか出せなかったため活用が難しかった。それが、ドコモグループのAI「corevo(コレボ)」の持つ時空間変数オンライン予測技術を活用することで、およそ1時間先の未来予測を、30分ほどで出せるようになった(すなわち、予測が出た時点で30分先の未来の数値が確認できる)。現時点で、1時間先の予測の誤差は10%前後という精度。250m~500m四方のエリア単位で、未来の人数を予測する。


こちらは250mメッシュで確認できる

 近未来人数予測は、今回のAIタクシーのようなサービスのほか、観光エリアの混雑緩和・周遊性向上、事故や災害時の避難誘導・救助隊の適切な派遣指示、など活用の幅が広がっている。今後、2時間先、3時間先と、どんどん先の未来が予測できるようになる可能性はあるという。

近未来人数予測の活用イメージ

■未来予測のパラドックス

 未来予測が現実のものになってきた一方で、課題もある。「AIタクシー」の例で言うと、ドコモはあくまで需要の予測をデータとして提供するだけであり、その先の運用方法はタクシー会社に委ねられている。配車センターでデータを見ながら各ドライバーに指示を出す場合もあれば、各ドライバーが車内に備え付けられた端末を見て独自に運用するケースもある。

 もし運用方法を誤れば、30台の需要が見込まれる地域に、40台のタクシーが向かってしまい、結果的に10台のミスマッチが生まれる、といったことも考えられる。仮に、同じエリアで営業するタクシー会社同士がAIサービスを同時に利用した場合はどうなるのだろうか。そのあたりのノウハウは今後、各事業者が積み重ねていくしかないだろう。

 未来予測自体についても、すべてAIにお任せ、というわけにはいかないようだ。人の流れの特徴がはっきりしている繁華街などの地域においては、あらかじめ予想される結果を想定し、人がデータをチューニングしてから機械学習させるアプローチの方が予測精度が高い傾向にあるという。逆に、特徴の読みづらい場所においては、とにかく多量のデータを食わせてディープラーニングさせることで、人が考えつかなかった傾向が見えてくる。そうした使い分けをまだまだ人の手でやっていく必要があるというわけだ。

近未来人数予測の分析イメージ

 もうひとつ気になる問題は、未来予測の精度および期間が向上したとすると、今度はそれを見てしまった人の行動が変わり、結果として未来が変わって予測が外れるのでは?という点だ。タクシー配車のサービスにおいては、需要予測を供給サイドにのみ見せているため、需要が変わることは考えにくく、この心配は少ないと言える。一方、観光エリアの混雑緩和情報などの場合、実際にそのエリアに行こうか迷っている人がその情報を見て行動を変えることは考えられる。未来予測によって未来が変わってしまうという言わばパラドックスが起きてしまう。今後、近未来予測を活用したさまざまなサービスの登場が予想される。それぞれのサービスにおいて、AIが持たらす情報をどのように運用して、課題を解決していくか。まだまだ人が大いに頭を悩ませる必要がある。

※みんな“女子高生「りんな」”の電話を待ち焦がれる?AIが会話をリードする時代

走り出した「AIタクシー」。近未来予測が持たらすもの

《白石 雄太@RBB TODAY》

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