幅広い分野手がける KYB の“モノづくり”とは…クルマ、バイクから航空・鉄道、建設機械関連まで

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KYB
  • KYB
  • 創業者・萱場資郎
  • 油圧緩衝脚「オレオ」
  • 油圧ジャッキ
  • ショックアブソーバ(1950年代)
  • ショックアブソーバ
  • 電動パワーステアリング
  • CVTベーンポンプ

特徴的な赤い三文字の「KYB」ロゴ。クルマ好きならこの三文字からショックアブソーバを思い起こす人が多いだろう。

KYBは、日本屈指、いや世界屈指の総合油圧機器メーカーである。その事業は多岐に渡り、長年培ってきた技術力への信頼も厚い。今年83周年を迎えるKYBの“これまで”と“今”を紐といてみたい。

◆創業者・萱場資郎が築いた “ものづくり”の精神


KYBは宮城県出身の萱場資郎が1919年(大正8年)、21歳のときに設立した萱場発明研究所にそのルーツがある。資郎は創立後わずか2年で大きな転機を迎える。1923年(大正12年)9月1日、関東大震災が発生。被災をきっかけに資郎は一時的に海軍の技術者となる。その後、資郎は、1935年(昭和10年)に萱場製作所を創立。萱場製作所の数ある製品のなかでも「オレオ」と呼ばれる航空機用の油圧緩衝脚は、後の自動車用ショックアブソーバを開発にするにあたり、重要な一歩となった。

第二次大戦後、民需企業への転換と再建が始まる。萱場製作所は萱場産業と社名を変え、農耕具、大工道具、牛車、馬車などさまざまな製品を製造したが、当時の多くの企業がそうであったように同社もまた大きな経営危機を迎えた。そこで萱場工業が設立され、資産を移行することで萱場産業は精算された。

やがて朝鮮戦争の特需により日本の産業は飛躍的に復興。萱場工業はダンプトラックの生産などを行った。特需後は生産比率をトラックなどから油圧部門にシフト。油圧ジャッキ、鉄道車両用オイルダンパなどの生産を拡大した。

◆世界にも進出、2015年に社名をKYBへ


1950年代に入ると自動車用ショックアブソーバはもとより、航空機部品、油圧ジャッキなども安定的な受注を確保。手狭になった東京工場から岐阜工場へとショックアブソーバの生産拠点を移動している。その後は、建設機械、産業機械用のギヤポンプやギヤモーター、パワーステアリング、コンクリートミキサなどの特殊車両、航空機部品などさまざまな分野へ進出した。

1964年にはアメリカへ油圧ジャッキを輸出、1965年からは東南アジアへのショックアブソーバの輸出が開始された。1978年にはカリフォルニア駐在員事務所、西ドイツにヨーロッパ駐在員事務所をそれぞれ開設。海外進出が本格化する。1985年には社名を萱場工業からカヤバ工業へと変更した。

バブル期となった1980年代後半では 1987年、アメリカにショックアブソーバ生産会社 Kayaba Industries を設立。同年、電子制御サスペンションの開発にも着手する。また、1985年からはロケット機器の開発にも携わる。

その後、事業の拡大とともに海外進出も積極的に行ったカヤバ工業は、創立80周年を迎えた2015年に社名をKYBに変更している。

現在KYBは、国内の工場だけで6カ所を稼働。関連会社を含めて13社が存在している。またヨーロッパでは13カ国に9社、アジアでは7カ国に19社、南北アメリカで3カ国に7社を展開。まさに世界を代表する企業に成長した。

◆主力の四輪・二輪関連部品


2016年の製品別売上高を紐といてみると、もっとも大きな割合となっているのがオートモーティブコンポーネンツ事業つまり自動車用部品で、65%にもなる。そのなかでももっとも大きな比率となっているのが四輪用の緩衝器、つまりショックアブソーバで、全体の42.5%にもなる。

また二輪用の緩衝器も8%の割合を占める。二輪の場合はフロント用がフロントフォークというサスペンション一体構造のものとなることが多い。KYBではこのフロントフォークの摩擦抵抗を減らすDLC加工を施した製品なども用意し、高性能と高い信頼性を実現している。

そのほか、四輪用としてはパワーステアリング、CVT用ベーンポンプなども製造している。

◆鉄道、舞台装置でも支持を集める油圧技術


次に大きな比率となっているのがハイドロリックコンポーネンツ事業で、これはさまざまな油圧機器のこと。鉄道や建設機械、フォークリフトなどに使われる機器で、全体の27%を占める。原動機からの動力を油圧の流体エネルギーに変換する油圧ポンプや、油圧モーターは建設機械などの走行や転回の動力に使われる機器で、減速機を一体化したコンパクトな構造が世界中のメーカー、ユーザーに多大な支持を受けている。ポンプやモーターの油圧を制御するためのコントロールバルブもまた、KYBの得意とする分野だ。以前は航空機関連の製品もハイドロリックコンポーネンツ事業に含まれていたが、現在は航空機器事業部として独立し、より発展を進めている。

それ以外にも国内シェア80%以上を占めるコンクリートミキサ車なども製造。免制震用オイルダンパは東京駅の駅舎や高層ビル、タワーにも採用され、地震や風による揺れの低減に貢献している。

◆スポーツ分野での活動も


KYBはモータースポーツをはじめ各種スポーツへのスポンサー活動も積極的だ。

4輪モータースポーツではショックアブソーバや電動パワーステアリング(EPS)を供給。世界耐久選手権(WEC)、ニュルブルクリンク24時間レース、アジアクロスカントリーラリー(AXCR)、全日本スーパーフォーミュラ選手権、スーパーGT、スーパー耐久、全日本ラリー選手権、全日本ジムカーナ選手権、全日本ダートトライアル選手権などをスポンサードや製品供給。2017年7月には、世界ラリークロス選手権(WRX)に参戦する「チーム EKS」とスポンサー契約を結んだ。

2輪モータースポーツではフロントフォークやリヤショックユニットを供給。ロードレース世界選手権 Moto2「Tech3 Racing Team」、モトクロス世界選手権 MX GP/MX2、全米モトクロス選手権 SX/MX、フリースタイルモトクロス、ロードレースアジア選手権、ロードレース全日本選手権 JSB1000/ST600、モトクロス全日本選手権 IA1/IA2、エンデューロ全日本選手権、モタード全日本選手権などを後押しする。

また、サッカーではメキシコ1部リーグ「Club Leon」、国内ではJ3リーグの「SC相模原」、サイクリングではTeamUKYOをサポート。日本障害者スキー連盟のオフィシャルスポンサー及びサプライヤーとしてチェアスキーに使われるショックアブソーバの開発や提供も行っている。KYB社員である鈴木猛史選手は、今後国際大会でのメダル獲得への期待が高まっている。

創立から83年を迎えるKYBは振動制御/パワー制御という基軸を大切にしながら、つねに新しい世界を見続けそして製品を開発し続けている。やがて訪れる自動車の電動化、自動運転化の世界でもその技術力は余すことなく活かされることだろう。

KYBのホームページはこちら

《諸星陽一》

諸星陽一

自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。

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